62.文化祭㉕
お面をはずした私は髪の毛を40秒でおさげにも出しました、そしてメガネをかけようとすると、私の眼鏡をあきちゃんがひょいと取り上げました。
「まだメガネかけないで。」
とあきちゃんは私の手を握りました。
あ、もしかしたら、さっきのお化け屋敷が怖かったから、心細いのですね。だから手を握る理由が欲しかったんですね。あきちゃんは男の子ですもんね。怖いから手を握っていてなんて恥ずかしくて言えませんよね。
あきちゃんはしっかりしていますけどまだ15歳。子供です。甘えたい時もありますよね。それにこれまでご両親と離れて暮らし寂しい思いもたくさんしてこられたんですよね、独逸という知らない土地でも花ちゃんと支え合い頑張ってきたんですよね。私はあきちゃんのこれまでの人生を考えると胸が締め付けられる思いになりました。
「はい。このままで。でも眼鏡は返してくれませんか?メガネがないと不便なんですよ。今朝だって、洗顔フォームと歯磨き粉を間違えて顔を洗ってしまいましたし。」
「逆じゃなくてよかったね。」
「ええ。本当に。洗顔フォームってとても苦いんですよ。」
「ははは。じゃあ、眼鏡を返して欲しければ、私にお菓子食べさせて。」
「今日のあきちゃんは甘えん坊さんですね。」
私は眼鏡を無事に返してもらいました。
私たちは時間まで手を繋ぎ、信くんに貰った飲み物と,お菓子を食べながらおしゃべりをしました。
「じゃあ。私そろそろ行きますね。」
「うん。明日の演劇、頑張ってね。絶対見に行くから。」
「ありがとうございます。」
私は教室に戻ると、もうすぐ3時。おやつ時で皆さん小腹が空いたんでしょうね。教室の前は長蛇の列です。
「ナヲさん。早速で悪いんですが、トッピングをお願いできませんか?今、ホットケーキがよく出てて。お客様に早く提供できるように、トッピングの人数を増やし方がいいと思うの。又ホットケーキ担当になって申し訳ないんだけど。」
「佐藤さん、気にしないで、了解です!」
私が調理スペースに入ると、ウエイトレスをしている富さんから、
「デート、楽しかったですか?」
と耳打ちされました。
「ええ。とっても。」
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。