60.文化祭㉓
お面のおかげで、あきちゃんが女子生徒たちに囲まれることなく、無事に1年A組につきました。
「2名様ですね。こちらからどうぞ。」
丁度お客さんが途切れたところだったようで、すぐに案内してもらえました。
「ナヲちゃん、私がいるから大丈夫だよ。」
「ありがとう。」
それにしても困りました。眼鏡をしていないのでよく見えません。時々
「わー!」
「ギャー!」
と生徒さんたちが驚かせてくださいます。一生懸命頑張る若者たちのひたむきな姿に私は感動しました。
「あきちゃん怖くない?」
「大丈夫ですよ。すごく楽しいです。」
「なんだ・・・。」
私たちはさらに奥へ進むと、
「ガオー!」
私のすぐ横で何かが飛び出してきました。その何かとぶつかりそうになった私をあきちゃんが抱き留めて守ってくれました。あきちゃんは、
「ナヲちゃん。もうちょっとだけこのままでいて。」
と耳元で囁きました。あきちゃんは少し震えています。あきちゃん、本当は怖かったんですね。私を楽しませようと無理をしたんですね。私は怖がるあきちゃんを一度ぎゅっと抱きしめ、
「あきちゃん、もう大丈夫です。私がついていますよ。さあ、出口を目指しましょう!!」
私は怖がるあきちゃんの手を引いて出口に向かいました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部なんですよ
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。




