50.男同士の話(あきちゃん視点)
「で。あきちゃん。うちのかわいい妹との仲は進展したのかね?」
急に正ちゃんはおじさんの様な口調で問いかけてきます。だったら私も。
「正ちゃんのおかげでナヲちゃんとはゆっくり話ができました。」
「それだけかね?」
「あーんをしたり、あーんをしてもらったり。恋人同士のようなひと時を過ごすことができました。」
「他は?」
「他は私とナヲちゃんとの秘密です。」
「そっかー。あきちゃん頑張ったんだね。」
と、いつもの正ちゃんにもどり私をねぎらってくれました。
「うん。でも、僕がナヲちゃんのことを異性として見ていることが伝わっているのか微妙なんだよね。あきちゃんとそこのところがかみ合っていないっていうか、なんというか。」
「そっか。たぶん、さっき恋人同士のひと時って言ったけど、たぶんナヲはそう思ってないだろうね。多分母親が子供にご飯を食べさせているって感覚?なんていうのかな?母性?・・・多分異性と母性っていう感情の違いがかみ合っていない原因なんだと思うんだよね。」
・・・ああ。母性か・・・。なんか腑に落ちた。そっか。まだ全然前に進めていないんだ。私ががっかりしていると。
「でもがんばったじゃん。ナヲがあきちゃんと食べさせあいっこしたんでしょ。ナヲはあきちゃんだから、母性が出たんだよ。それに僕に内緒の秘密もあるんでしょ。2人だけの秘密を作れただけでも大きな前進だよ。」
「正ちゃん。ありがとう。なんか元気出てきた。」
「よかった。あきちゃんが元気ないと花ちゃんが心配するから。」
馬車に着きました。
「送ってくれてありがとう。じゃあね。しょうちゃん」
・・・今日はいい1日だったな。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部なんですよ
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父




