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46.文化祭⑩

 扉が開くとあきちゃんが先に降り、馬車を降りる私をエスコートしてくれました。・・・と目の前には、西洋のお城のような洋館が・・・。え?!お茶をしに来ただけですよね。

「角様。ここは?お茶をしに来ただけですよね。」

「二人だけの時は名前で呼んでくれるって言ってたよね。」

「ああ。そうでした。あきちゃん。ここって、私のような平民が来ていいところじゃないですよ。それに私、そんなに持ち合わせがないんです。」

「ナヲちゃんはそんなこと心配しなくていいから。もちろん僕にご馳走させて。あとは僕に任せてくれたらいいから。」

「そんなわけには。私だって働いていますし、あきちゃんにご迷惑をおかけするわけにはいきません。お食事代は明日必ずお返しします。」

「ナヲちゃん。こういう時は、ありがとうって言って、素直にご馳走になるのがマナーだよ。」

「ごめんなさい。私、こんな素敵なお店に来たことも初めてですし、男性にご馳走になる機会もなかったので。不快な思いをさせてしまってごめんなさい。」

「ううんいいんだ。ただ、気にしないでって言いたかっただけだから。」

「うん。ありがとうございます。」

「じゃあ、行こうか。」

私はあきちゃんに手を引かれながら洋館に向かいました。



「素敵なところですね。なんだか緊張するわ。」

「今日は貸し切りだから、気楽に楽しもうよ。」

「え。貸し切り??」

「ここは警備が行き届いているから安心なんだ。」

そっか。あきちゃんは皇族だから、万全の警備が整った場所じゃないといけないんですよね。そう考えると、あきちゃんを商店街に連れて行ったりしてもいいのかしら。そんなことを考えていると奥の部屋に案内されました。

テーブルに案内されると、あきちゃんは

「いつもので。」

とだけ言うとウエイターさんは部屋を後にされました。

「お茶じゃなくてこれから一緒に食事をしよう。もうナヲちゃんの家には連絡を入れて、正ちゃんに許可はもらっているから。勝手なことをしてごめん。こうでもしないとナヲちゃんとゆっくり話ができないら。」

「そういえばあきちゃんが帰ってきてからゆっくり話をしていなかったですね。でも学校でも放課後でも声をかけてくだされば、いつでも話はできますよ。同じ学校に毎日通っているわけですし。」

するとあきちゃんは改まって、

「私はナヲちゃんと二人きりで話がしたかったんだ。」

とあきちゃんは真剣な目で私を見つめました。

そうですよね、あきちゃんは皇族の方。花ちゃんの怪我のことや、あきちゃんがしゃべれなかったことなど、過去のこととはいえ、皇族の健康状態をほかの生徒たちに聞かせるわけにはいきませんよね。

「あきちゃん、安心してください、守秘義務についてはよく理解していますから。


「あ。ああ。」


それから、私たちは10年間の出来事を語り合いました。


「そういえば、ナヲちゃんは神力持ちだったよね。将来は?っていうか進路は決まったの?」

「私は、出版社の仕事も工場の仕事も周南堂の仕事も楽しいんです。だからこのまま仕事を続けようかなって思っています。」

「正ちゃんから聞いたけど、ナヲちゃんは神力持ちで訓練にも通っているんでしょ。騎士団には入らないの?ナヲちゃんの腕前だったら剣術大会で優勝できるって聞いたけど。」

「それ、兄さんからの情報でしょ。兄のひいき目が入っていますからあてにはなりませんよ。私は騎士団に入る予定もありませんし、剣術大会に出場する気もありません。」

「え?それだけの実力があれば貴族にだってなれるんじゃないの?・・・ナヲちゃんは、正ちゃんみたいに愛する人のために貴族になりたいとか思ったりしないの?」

「そもそも、愛する人探しから始めないといけませんよね。それに、愛する人が貴族とも限りませんし。」

「そっか。じゃあ、もしも、もしもだよ。ナヲちゃんが貴族に恋をしたら。正ちゃんみたいに貴族になるために頑張ったりするの?」

「ん~。どうでしょうね。その時になってみないとわかりませんが・・・。どうでしょうね。信くんや富さん、九条さんや他の貴族の友人の話を聞く限り、私には貴族の世界は合わないことは十分にわかっていますので、まず貴族になることはないでしょうね。」

「そ。そうなんだ。」

あきちゃんがうつむいて一点を見つめています。きっと貴族の世界を私が全否定をしたように思われたのでしょうか。

「あきちゃん、私は貴族の世界を否定しているわけではありませんから。」

「あ。うんわかってる。ごめんね変なことを言って。それより、ナヲちゃんはまだ、姉様に会っていないよね。」

「ええ。」

「次の訓練の日、火曜日だっけ。私とデートをする翌日の夕方。私と姉さんと三条のおじさんと兵部省のお偉いさんとで訓練を見に行くことになっているんだ。」

「そうなんだ。うれしい。私、花ちゃんにずっと会いたかったんです。花ちゃんとてもきれいになっていたって兄さんが言っていたんです。楽しみだわ。」

「ナヲちゃんもきれいになったよ。」

「まあ。あきちゃんったらお上手ね。」

「いや。本当にそう思ってるよ。」

「ありがとう!!そういってくれるのはあきちゃんだけですよ。」


そんな話をしながら素晴らしい料理に舌鼓を打ち優雅なひと時を過ごしました。さすが皇室御用達ですね。あきちゃんのおかげで、素敵な時間を過ごすことができました。



小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。

角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。

小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。

花ちゃん→角光明の姉。

坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。

水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部

長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。

吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。

野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。

野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。

三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。

市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。

相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族

九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部なんですよ

春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。

春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父

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