45.文化祭⑨
その後、富さんはそのまま茶道部の活動に、信くんは柔道場に、残った私たちは昇降口に向かいました。
「俺とかえでは劇の自主練してから帰ろうと思うんだけど。角様とナヲはどうするんですか?」
「私も、家で舞台の自主練はしてるんです。今日はこれから予定もないし参加しようかしら。」
「僕も今日は予定がないし、劇の練習見て行っていいかな?」
「ナヲ。あんたたぬきの役で台詞はたった一言だけだったじゃん。だったら、角様とお茶でもしてきなさいよ!」
「俺もそう思う。角様、ナヲは勉強や文化祭の準備や、仕事が忙しくしていて、リフレッシュをする暇もないんです。ナヲをお茶に連れて行ってはくれないでしょうか?」
「え?いいの?ああ。ぜひ。ナヲちゃん私と一緒にお茶。どうかな・・・。」
「ええ。ぜひ。じゃあ、そうしましょう。」
すると、あきちゃんは隆くんとかえでさんに呼び止められ何か話をしています。それから、
「じゃあ、うちの馬車に乗っていこう。」
私とあきちゃんは、馬車に向かいました。
「さ。どうぞ。あきちゃんのエスコートで馬車にのりました。」
さすが、角家の馬車。座り心地は抜群です。
「ナヲちゃん。今日はコロッケとクッキーありがとう。すごくうれしかった。」
「あきちゃんって商店街とか行かないでしょ。だから、私のおすすめの逸品を食べてほしかったんです。」
「じゃあ、お店まで時間がかかるし、今から食べてもいい?」
「ええ。ぜひ。」
「ナヲちゃんは。半分食べない?」
「私大丈夫です。買い出しの時にいただいたから。」
「そっか。じゃあいただきます。」
とあきちゃんはぱくりとコロッケを食べると、
「う。うまい。ナヲちゃん。とってもおいしいよ! 」
「それはよかったです。」
今日のクラスの皆さんもそうですが、若い人がおいしそうに何かを食べる姿を見るのは、なんて気持ちがいいんでしょう。見ているだけで幸せになります。
「今日は、九条さんと二人で買い出しに行ったんだよね。」
「ええ。」
私は、あきちゃんに九条さんとの買い出しに行った話をしました。すると、
「九条さんばかり・・・ずるい。私だってナヲちゃんと商店街で揚げたてのコロッケ食べたかったし、買い物もしたかったし、工場にも行ってみたかったし、オート三輪の荷台にも乗りたかった・・・。」
九条さんもおっしゃっていましたが、貴族の方々にとって、私たち平民の日常が楽しく映るんでしね。特にあきちゃんは皇族だから、こんな自由な生活がうらやましく映るんでしょうね。
「あきちゃんさえよければ商店街と工場に一緒に行きましょ。富さ・・・。」
「いや、二人で行こう。」
私の話を遮るようにあきちゃんが言いました。きっと、まだあきちゃんは富さんや信くん、隆くんにかえでさんに気を使っているんでしょうね。部活動を通してみんなにもゆっくり慣れていただけたらなと思います。
「わかりました。じゃあ。そうしましょ。」
お互いのスケジュールを確認しあったところ、文化祭の翌日の代休、月曜日に行くことが決まりました。
そんな話をしているうちに、馬車が止まりました。
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部なんですよ
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父




