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40.文化祭⑤

「いらっしゃい、待ってたよ!」

「おじさん、この砂糖1キロと玉子2パックください。」

「はいよ。卵は今朝産みたてだよ。バラで4つおまけしてるから。」

「ありがとうございます。領収書もお願いします。」

「はいよ。」


すると奥からおばさんが

「業者から貰った試供品だけど、飴玉、持っていきな。2袋もあれば、クラスのみんなに一個ずつはあるだろ。」

「おばさん。ありがとうございます。うれしいですわ。」


「ありがとうございます。」

と九条さんは深々頭を下げた。

「礼儀正しい、いい子じゃないか。私があと10歳若かったら彼氏にしてるよ。」

「おいおい、兄ちゃんにも選ぶ権利があるんだよ!」

おじさんとおばさんの漫才が長くなりそうだったので、改めてお礼を言ってから、食料店を後にしました。



そのあと、手芸店でお花紙と木工用ボンドと黒のミシン糸を買って、工場に戻ることにしました。


「あ。ちょっと待って小南さん。コロッケを買って帰っていいかい。僕だけこんなにうまいもの食べて帰るなんて、学校に残っているみんなに申し訳ないよ。それと君のおじさんとおばさんにもお世話になったから。」

「いいですね、ここのコロッケは、カレーコロッケもおいしいんですよ。コロッケを九条さんが、カレーコロッケを私が買います。私もここのコロッケ、みんなに食べてほしいわ!九条さん素敵な提案をありがとうございます。」

「どういたしまして。」


それから、私たちは、クラスのメイトの分と、おじさんとおばさんの分、そして各々のお土産分と大量のコロッケを肉屋のおばさんに注文し、おばさんたちがコロッケを揚げている間ベンチで待つことにしました。

「僕の家族もきっとこの味に感動すると思うんだ。」

「ここのコロッケは冷めてもおいしいですけど、オーブンで2分くらいで温めなおして食べると揚げたてを味わえますよ。」

「わかった。料理長に伝えるよ。」

などと私たちはたわいのない話をしていると、

「お待たせ!重たいよ!」

「大丈夫です。」

支払いを済ませると、コロッケは重たいからと九条さんが全部持ってくださいました。


「九条さん、大丈夫ですか?私もひと箱持ちますよ。」

「大丈夫だ。君は卵をよろしく。」

「わかりました。」


「今日は、楽しかったよ。この学校に入って自分が生きていた世界がいかに小さかったか。君たち平民の友人に教えられる日々だよ。」

「私たちは、逆に貴族の世界について何も知りません。きっと私たちの知らないご苦労がたくさんあるのでしょうね。」

「・・・そうだね。また、僕にいろいろなことを教えてくれないか?」

「もちろん。」


そんな話をしていると、工場に到着しました。


「お帰り。金型できたぜ!」

「ありがとうございます。かわいい。イメージ通りだわ!」

「これはすごい。ありがとうございます。これは僕たちからお礼です。お肉屋のコロッケです。奥様と召し上がってください。」

「俺の好物じゃないか!悪いね。今日の夕飯が楽しみだ。あ。お前たちはこれから学校に戻るのか?」

「ええ。そうだけど。」

「今から学校の近くに用があってよ。乗っていくか?」

「ありがとうございます。荷物も多いから助かります。」


「お前たちは荷台に乗りな。」

「わかったわ。」

私は荷台に乗り込むと、九条さんから荷物を受け取った。

「ここに乗るのかい?」

「気持ちいいですよ!道が悪いとお尻が痛くなりますけどね。さっ。」

私が手を差し出すと九条様は赤くなって手を取り荷台に飛び乗りました。さすが社交ダンス部。身のこなしが華麗です。


「しっかり持っとけよ!動かすぜ。」


私たちはこの帝都でも珍しいオート三輪の荷台にのって学校に向かいました。

終始九条さんが楽しそうだったから、こちらまで楽しい気持ちになりました。

15分くらいで学校前につき、


「気を付けて降りろ。忘れ物はないか?」

「大丈夫です。おじさん、ありがとうございました。」

「僕は初めてオート三輪に乗ってうれしかったです。ありがとうございました。」

「そうかい、九条君もまた遊びに来いよ!じゃあな!」

と、おじさんの車は走り去りました。


「さ。九条さん。行きましょうか。」

「そうだね。まだコロッケ、温かいよ。」

私たちは教室に向かいました。



小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。

角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。

小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。

花ちゃん→角光明の姉。

坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。

水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部

長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。

吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。

野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。

野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。

三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。

市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。

相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族

九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。

春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。

春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父

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