395.兄とふたりで②
「は?いきなり何?」
とびっくりした表情で兄は私に尋ねます。私は
「言葉の通りです。この試合は兄さんの将来だけじゃなくて、兄さんの大切な人の将来もかかってるんです。それに・・・私と私の大切な人の将来も。ただでさえ、私たちが剣術大会に出場することを反対している人たちがいるのに、兄さんが落ち込んで弱気になって、ぬるい試合になったら、私が勝ったとしてもそれが理由で、貴族になれなくなるかもしれないんですよ。しっかりしてください。」
と伝えました。すると兄は
「あ、そうだった・・・。ごめん。」
としゅんとして謝りました。兄さんははなちゃんに会えないストレスからか、とても弱気になっています。その時、急に馬のヒヒーンと言う鳴き声と共に、馬車が大きく揺れました。外では悲鳴が聞こえます。私は急に嫌な予感がして(曲がって修理に出す)刀を持って外に飛び出しました。
「ナヲ、待って。」
と兄も後から外に出てきました。私達の馬車は大勢の柄の悪い男たちに囲まれ、御者(馬を操り馬車を運転する人)は左肩から血を流しています。私たちを取り囲む柄の悪い男達はざっと4、50人。こちらを見ながらニヤニヤしています。すると御者が
「お2人ともお逃げください。」
と叫びました。私は刀を抜きました。(刀身が曲がっているので鞘から出す時にいやーな音が出ました。)そして、私が
「あなた方は山賊なんですか?」
と尋ねると、ひとりの太った男が
「さあ、どうでしょう?」
と言っていきなり襲いかかってきました。そしてそれが合図になり4、50人くらいの男たちも一気にこちらに襲いかかってきました。私は体に神力を通し、その男たちを峰打ちで次々と倒していくと、
「ナヲ、こいつら殺すなよ!」
と言いながら兄は刀を使わずに拳で山賊達を次々と叩きのめしていきました。
そして最後の1人になった時、兄はその男に思いっきりかかと落としをキメました。
 




