38.文化祭③
工場へ到着した私たちは、フジおばさんに応接室に通され、早速打ち合わせを始めました。
「それで、今学校にある金型は、桜と梅の2種類なのね。それでこのくまと、ねこと、うさぎの形を新しく追加したいと・・・。わかった。もうすぐ主人が戻るから。」
その時、
「あー。ごめんごめん。大橋産業の課長の話が長くってさ。おっ。ナヲ、彼氏ができたんか?」
「初めまして。九条善高と申します。小南さんにはいつもお世話になっています。」
「いい男じゃないか。ナヲ!青春してるな!九条さん、ナヲをよろしくお願いします。」
「・・・あ。はっはい。こちらこそよろしくお願いします・・・。」
「おじさん、残念ながら、九条さんは彼氏ではありませんよ。」
「え?九条さんは違うって言ってねーじゃねーか。」
「九条さんはとてもお優しいから、私が恥をかかないように話を合わせてくださったんです。九条さん。お気遣いありがとうございます。」
「いや・・。それほどでも。」
「おじさんも、おばさんもお忙しいでしょ。さっそく始めましょ。」
竹男おじさんに金型の件を説明をすると
「金型は何個いる?」
「3個づつくらいあればいいかしら。でも予算もありますし。」
「金型は端材をかき集めたらいけそうだぜ。すぐできるからタダでいいよ。ナヲには世話になってるし。クッキー作りが流行れば金型の注文が増えるだろうからさ。それで儲けさせてもらうよ。ただ、今、急ぎの仕事が入ってて機械使ってんだよ。1時間くらいかかるけどいいかい?」
「じゃあ、その間、私たちは買い出しに行ってきます。おじさん、おばさんありがとうございました。」
「春日さん、お忙しい中、ありがとうございます。では、後で伺います。失礼します。」
(春日というのは叔母さん夫婦の苗字。ちなみにこの工場は叔母さん夫婦が経営している春日工業の工場です。)
私たちは近所の商店街へむかいました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父。