36.文化祭①
毎朝、A組では朝補習が行われています。あきちゃんに勉強を教えたことを市川先生が知ったことがきっかけになって、各学年で希望者を募り先生方が朝補習を開講してくださるようになりました。
1年生は40人弱の希望者がいて毎朝頑張っていらっしゃいます。ちなみに3年生はほぼ全員が受講しているそうです。
さっ。私も皆さんに負けないように頑張るとしますか。私はいつものように自習を頑張りました。
キーーーンコーーーンカーーーンコーーーーン!!
「みんなおはよう!今日はホームルームと1時間目を使って文化祭の出し物と、クラスで行う模擬店のメニュー決めを行う。あ。それと文化祭の委員を決めたい。男女一人ずつ。」
(この学校では毎年二学期早々に学園祭が行われています。) すると富さんと信くんが文化祭の委員に立候補をしてくれて、すぐに決まりました。そして、文化祭の出し物は演劇。白雪姫をやることに決まりました。しかし、模擬店のメニューがなかなか決まらずに大変だったんです。なぜかというと、販売するメニューが他のクラスかぶってしまうと抽選になるので、他のクラスが選ばないようなメニューを考えなくてはならないのです。ちなみに、うどん、そば、おにぎり、太巻き寿司、稲荷寿司、焼きそばにお好み焼き、サンドウィッチや、焼きそばパン、甘いものは団子やおはぎ、かき氷にアイスクリームなどが、毎年人気があるそうです。
「ナヲ!お前物知りだろ、なんかいいアイデアはないか?」
「ん~。そうですね・・・。先ほど伺いました人気メニューはがっつりした食事やお菓子が多いですね。では、焼き菓子や、プリンにゼリー、ホットケーキなどの洋菓子はいかがでしょう。焼き菓子作りは手間がかかると思われていますが、前日に作ってラッピングしておけば当日はお茶とお出しすることもできますし、お土産に販売することもできます。プリンとゼリーも前日に作り冷蔵庫に入れておけば問題ありません。かき氷のように業者から機械を借りる必要もないのでその分の予算をほかに回すことができます。」
「でも、洋菓子って買うものでしょ。素人の私たちが作れるのかしら?」
そうなんですこの帝国ではもともと一般的に洋菓子が流通していなかったんです。だから、幼い私は前世の味が恋しくなり、母に作り方を本で読んだと嘘をつき、いろいろ作ってもらったんです。そのお菓子を涼くんやゆずちゃんがうちに来た時におやつで出したら、その日の夕方おじさんとおばさんが洋菓子の作り方を習いに来られて。そのことがきっかけで、周南堂の商品開発の仕事をさせていただくようになりました。ちなみにセイコウ出版で、簡単にできるお菓子のレシピを出版したのですが、洋菓子は買うものだという皆さんの意識が強くてちっとも売れなかったんですよね。未だに帝国では洋菓子を自宅で作ることはほとんどありません。
私は前世で、子供や孫、ひ孫のためによく焼き菓子を作ってたので、お菓子作りは得意なんです。
「大丈夫です。実は私洋菓子作りが好きで、たまに家でも作っているんですよ。ちょうどいいレシピ本もありますから、明日、持ってきますね。」
文化祭がきっかけでセイコウ出版のレシピ本が売れたらいいなあ・・・。そんなことを考えてしまいました。
「では、うちのクラスは、焼き菓子、プリン、ゼリーとホットケーキで。それとそれに合うお茶やコーヒー、ジュースを提供する喫茶店にしましょう。皆さんどうですか?」
富さんの問いかけに満場一致で賛成。とりあえず無事に話し合いは終わりました。
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族