345.再会②
あきちゃんの話、大川さんの話を聞いてこの高千穂で1ヶ月近く戦ってきたあきちゃんや特別部隊の方々のご苦労を考えると胸が痛くなりました。私は改めてあきちゃんを見ると、この1ヶ月の日々の過酷さがよくわかります。
「この状況で私達はどのように戦うべきか。」
井沢団長は呟きます。しばらく沈黙が続きます。
「あの。洞窟は剣を持って戦うとしたら剣の長さにもよりますが、2人か3人ずつくらいしか入れませんよね。だから私と兄が1番最初に洞窟に飛び込んで幽魔を切り弱らせ、その後ろの2、3人がそれに攻撃して、倒せなかったらその次の2、3人がとどめを刺す。みたいに幽魔を弱らせながらみんなで倒していけば前に進めるかと。洞窟で倒せなくても入口で待機している部隊は弱りきった幽魔を倒せばいいわけですから普段も少ないかと。兄さんどうでしょう。」
「流石俺の妹。なかなかなアイデアを出すじゃん。ナヲ、いけるの?」
「できなかったらこんなアイデアは最初から出しません。」
「わかった。みなさん。僕も妹の意見がいいと思います。というか、これしかないと思います。」
と言うと、大川さんは
「確かにこれしかないか・・・。では、君達の後ろには私が入ろう。そして、井沢団長と2番手を担当、その後ろに石川・・・。」
「ちょっと待って下さい。」
とあきちゃんが話を遮りました。
「ナヲちゃん、何言い出すの?そんな危険な事。君に任せられるはずないじゃないか!」
あきちゃんはすごい剣幕で私に言います。そして
「大川団長も、騎士団でもない子の意見をまに受けないで下さい。この作戦は却下です!」
と言い放ちました。私は
「角様、私は陛下から特別救援部隊の隊員として任命いただきました。それに私は救援部隊の一員としての力はみなさんに引けを取りません。隊の魁になるのは私と兄がやるのが1番いいと思います。」
すると井沢団長が、
「正直な話、隊の魁を務められるのはこの2人以外いません。この部隊の、いやここにいる隊員の中で1番の実力者はこの2人です。残念ながら私達はナヲさんと正次朗くんに頼るしかないんです。」
そう言われてあきちゃんは唇を噛み締めています。
結局私の意見は採用されて1時間後に作戦決行となりました。私達はそれまでテントで待機となりました。私達は荷物を持って移動をしていると大川さんがナヲさんちょっといいですか?と呼び止められました。すると福本さんが「荷物は俺が持って行くから。あ、おやつは置いてくか?」
「おやつ?」
「もう全部食べたかい?」
私と福本さんのやりとりを見て兄が私からバックを取り上げて開けると、
「あ、これこれ。はい。」
とおかしの入った紙袋を私に差し出すと、バックを持っていってしまいました。すると大川団長が
「角様、時間になったら呼びにきます。何かあったら第二テントにいますので声をかけて下さい。」
と言って中隊長達を連れてテントから出て行きました。テントには私とあきちゃんが残されてしまいました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。(みっちゃん)
角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
平川環→セイコウ出版社の社長。敏光の姉(フジの妹)。ナヲの伯母。
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務
浜田さん→皇太子殿下角輝光の専属執事
三木さん→皇居の女中頭
井沢団長→近衛騎士団元団長・現、特別救援部隊隊員
鶴崎→光枝(花ちゃん)の専属執事
北見→特別救援部隊隊員
青木→特別救援部隊隊員
長野→特別救援部隊隊員
山口→特別救援部隊隊員
秋元→特別救援部隊隊員
宮橋→特別救援部隊隊員
石川→特別救援部隊隊員
福本→特別救援部隊隊員
加山→特別救援部隊隊員
多加知→特別救援部隊隊員
佐々木→九州騎士団団員
柳井→九州騎士団団員
江口→九州騎士団団員




