338.宮崎に⑧
左袖が半分くらい出来ました。あと一息ですがこれ以上編み物を続けると目が疲れますし、肩も凝りますので一旦片付けてストレッチをしました。もう11時半です。まだここは福岡かな。あと3時間半後には宮崎に・・・あきちゃんに会えます。窓の景色を見ながら私はあきちゃんのことばかりを考えていました。
まもなく15時。まもなく宮崎駅に到着します。祠がある目的地の高千穂は大分と宮崎と熊本の県境にありますので、宮崎駅から高千穂までしばらく馬車で揺られなくてはなりません。
「あと10分弱で宮崎駅に到着するので、寝台に忘れ物がないかしっかりチェックをしておいてくださいね。」
と井沢団長が呼びかけます。
「ナヲ忘れ物はない?」
と兄が尋ねます。
「はい。寝台も布団をたたんだ際に忘れ物はないかすべてチェックを済ませました。刀も防具もこの中に。大丈夫です。」
私はバッグの中を確認しながら答えました。
「それならよし。ナヲ。もうすぐだな。」
「はい。」
私が返事をしたタイミングで、
「寝台車に老眼鏡忘れている人がいましたよー!」
と言って福本さんがが老眼鏡を掲げて寝台車から戻って来ました。
「ごめん。俺のだわ。」
と北見さんが老眼鏡を受け取ると、
「みんな、足元に忘れ物や落し物がないか確認しとけよー。」
と福本さんが呼びかけ。客車に忘れ物がないかみんなでチェックしました。そんなことをしていたら宮崎駅に到着しました。
「お疲れ様です。」
騎士団の隊服を着た方3人は私たちを敬礼で迎えてくださいました。
「長旅お疲れさまでした。私は九州騎士団に所属しています佐々木と言います。そしてがこっちが柳井、その隣は江口です。これから高千穂までトラックで向かいます。本来であれば馬車で移動したかったのですが、高千穂までの道は幽魔が増えてしまい馬たちがそこを通るのを嫌がって、言うことを聞かなくなるんです。現在馬車が使い物にならないので、寒くて乗り心地が悪いのですがトラックでの移動になります。」
と佐々木さんが申し訳なさそうに言いました。
私たちは彼らに連れられ駅の外に出ると、この世界では珍しい幌のついたトラックが1台止まっていました。私たちは佐々木さんと一緒に荷台に乗りました。荷台にはほろがかかっていますが、今まで暖房のかかっていた汽車にいたのでこの寒さは応えます。私は隊服のコートのボタンを上まで止めて襟を立てました。
「寒いので毛布を配りますね。それと荷台は揺れますんで、後ろの手すりを持ってください。」
と説明をしながら佐々木さんは毛布を配ります。私ははそれを受け取ると膝に掛けました。
私たちの出発準備が整ったと確認すると佐々木さんは荷台から運転席にトントンと合図を出しました。するとエンジンがかかりトラックはゆっくり動き始めました
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。(みっちゃん)
角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
平川環→セイコウ出版社の社長。敏光の姉(フジの妹)。ナヲの伯母。
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務
浜田さん→皇太子殿下角輝光の専属執事
三木さん→皇居の女中頭
井沢団長→近衛騎士団元団長・現、特別救援部隊隊員
鶴崎→光枝(花ちゃん)の専属執事
北見→特別救援部隊隊員
青木→特別救援部隊隊員
長野→特別救援部隊隊員
山口→特別救援部隊隊員
秋元→特別救援部隊隊員
宮橋→特別救援部隊隊員
石川→特別救援部隊隊員
福本→特別救援部隊隊員
加山→特別救援部隊隊員
多加知→特別救援部隊隊員
佐々木→九州騎士団団員
柳井→九州騎士団団員
江口→九州騎士団団員




