335.宮崎に⑤
目を覚ますと夕日がカーテンの隙間から差し込んでいました。
「もう、夕方か・・・。あっ眼鏡かけたままだった。」
私は眼鏡が歪んでいないか確認し、異常が無くてほっとしました。私はハンガーに掛けている隊服を着てベルトを締めていると、
「起きたのか?」
と下から兄の声がしました。
「はい。」
「静岡もう過ぎたぞ。」
「そうなんですか?」
「買い物しておいたから取りに来いよ。」
「はい。」
私がカーテンを開けると
「ナヲが好きそうなもの色々買った。どれがいい?」
「すぐ下ります。」
私が梯子を下りると、兄は袋を広げて私に中身を見せます。
「じゃあ、アンパンとお茶を下さい。」
と言うと
「はい。」
と兄が商品を手渡してくれました。
「兄さんはアンパンじゃなくてよかったんですか?」
「俺は焼きそばパンがあればいいから。」
「じゃあ、ありがたく頂きます。」
「兄さんはこのまま寝台車にいるんですか?」
「ああ。ダラダラしていたいからさ。」
「そうですか。私は客車に行きますね。寝てばかりいたら体が痛くなっちゃうんで。」
私は編み物セットとアンパンとお茶を持って客車に行きました。
私が客車に行くと長野さんと山口さんが話をしていました。
「あ、ナヲちゃん。起きたんだね。」
と長野さんに言われ、
「はい。ついさっき。」
と答えると
「静岡で買い物してないだろ。おじさん、若い子の好きなもの知らないからさ。気に入ってもらえる分からないんだけど動物のクッキーとキャラメル買ったからあげるね。」
と言って紙袋をくれました。
「ありがとうございます。」
とお礼を言いお菓子を受け取ると
「長野さんもナヲちゃんにお菓子買ってたの?」
と言って山口さんが私の前に紙袋を出すと
「どーぞ。」
と言って渡してくれました。
「ありがとうございます。」
「大阪まであと3時間もあるよね。退屈でしょ。」
と長野さんが言います。
「いえ、暇つぶしに色々持ってきてるんです。 」
と言って編み物セットを出すと山口さんは、
「すごいね。編み物してるんだ。おじさん老眼で細かい作業できないんだよな。」
すると長野さんも
「俺も。」
と言って笑います。そして二人は寝台車両へ行きました。客車は私一人だけになりました。私は誰もいない車両であきちゃんのセーターを編みました。・・・あきちゃん。大丈夫かな?何でこの世界は飛行機がないんだろ?早くあきちゃんに会いたい・・・。私はあきちゃんの事を思いながらひと目ひと目丁寧に編み続けました。
「ナヲさん。あまり根を詰めると宮崎に着く前に疲れちゃうよ。」
「井沢団長。」
「精が出るね。」
「はい。」
「もうすぐ大阪に着くから夕飯はしっかり食べて明日に臨んでくださいね。それと天照の世界でのお礼、まだ言ってなかったね。ありがとう。これ。ナヲさん、静岡土産の蜜柑飴と抹茶飴と梅干し。ナヲさん、静岡で買い物していないようだったから。」
「ありがとうございます。」
その時、
「まもなく大阪に到着します。申し訳ありません予定よりも15分遅れての到着になります。」
と井沢団長に報告にいらっしゃいました。
と車掌さんがやって来ました。
「わかりました。ありがとうございます。」
8時15分大阪に到着しました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。(みっちゃん)
角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
平川環→セイコウ出版社の社長。敏光の姉(フジの妹)。ナヲの伯母。
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務
浜田さん→皇太子殿下角輝光の専属執事
三木さん→皇居の女中頭
井沢団長→近衛騎士団元団長・現、特別救援部隊隊員
鶴崎→光枝(花ちゃん)の専属執事
北見→特別救援部隊隊員
青木→特別救援部隊隊員
長野→特別救援部隊隊員
山口→特別救援部隊隊員
秋元→特別救援部隊隊員
宮橋→特別救援部隊隊員
石川→特別救援部隊隊員
福本→特別救援部隊隊員
加山→特別救援部隊隊員
多加知→特別救援部隊隊員




