332.宮崎に②
花ちゃんのおかげで兄の二日酔いはすっかり回復しました。兄と花ちゃんはベンチに座り話し始めました。恋人同士の時間を邪魔しないように皇太子殿下と井沢元団長と10名の隊員の方は2人から距離をとっています。もちろん、私達家族も。・・・ってここにいる人たちは、兄と花ちゃんの関係を知ってるのかしら。そんなことを考えていたら、皇太子殿下は私に、
「ナヲさん。くれぐれも気をつけて。無理はしないでくださいね。困った事が有れば彼らが力になってくれますから。」
「はい。わかりました。ありがとうございます。」
と答えると、1人の騎士団の方が
「俺たちじゃ頼りにならんかもしれんが、俺たちを兄貴だと思って何でも言ってくれ!」
とおっしゃって下さいました。すると皇太子殿下は、
「兄貴?北見さんところは先日お孫さんが産まれててなかったかい?」
と言うと、他の騎士団の方が
「だよな。兄貴は図々しいな。俺たちのことはおじ様と呼んでくれ。」
とおっしゃってくださり、ほかの騎士団の方々も、
「こんなかわいい子におじ様って呼ばれるのは嬉しいな。」
と口々におっしゃってくださりました。
「わかりました。みなさんよろしくお願いします。頼りになるおじ様方とご一緒できて心強いです。」
と答えると、青木さんは
「おじ様だって聞いたか?あー俺、女の子が欲しくなったよー。帰ったらカミさんに頼んでみるか。」
「そんなこと言ったらカミさんに引っ叩かれるぞ。」
隊員の方々は楽しそうです。すると、
「私も先輩方と一緒で心強いよ。」
と井沢団長がおっしゃいます。
「なんか修学旅行みたいですね。こんなに和やかな出発になるなんて思ってなかったから。」
と伝えると、井沢団長は
「そうだね。ピリピリして長旅をするよりも和やかに過ごした方がリラックスして決戦の日に力を発揮できると思うんだ。何にせよ決戦に疲れを持ち込まないように、汽車ではゆっくり休んでおくようにね。私も、君達兄弟の足手まといにならないようにゆっくり休養を取って決戦の日に臨むから。」
と言うと、青木さんは
「俺も景色を見ながら一杯やりたいとこだが。とりあえず電車に乗ったら仮眠しとこ。決戦当日二日酔いでナヲちゃんに迷惑かけるわけにいかないからね。」
と言うと、
「当たり前です。」
と井沢団長は青木さんにツッコミを入れます。すると、
「俺はこの戦いについていけるかなー。ナヲちゃん、僕がピンチになったら助けてね。」
「はい。任せてください。みんなで帝都に帰りましょう。」
そんな話をしていると、ホームに2両編成の列車が入ってきました。行き先の方向幕には『特別列車・貸切』と書いてあります。兄と花ちゃんが私たちのところに合流すると、皇太子殿下が、
「聖なる祠の浄化を成功させる鍵は皆さん一人一人が持っています。帝国の明日をみなさんに託します。」
と言って敬礼をしました。すると特別救援部隊隊員のみなさんも敬礼し、私と兄もそれに倣って敬礼をしました。
私たちは両親や皇太子殿下、花ちゃんに見送られながら列車に乗りました。発車のベルが鳴り、窓の外にいる両親と皇太子殿下と花ちゃん、その後ろに控えている警備の方々に手を振りました。列車はゆっくりとホームを離れて行きました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。(みっちゃん)
角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
平川環→セイコウ出版社の社長。敏光の姉(フジの妹)。ナヲの伯母。
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務
浜田さん→皇太子殿下角輝光の専属執事
三木さん→皇居の女中頭
井沢団長→近衛騎士団元団長、現特別救援部隊隊員
鶴崎→光枝(花ちゃん)の専属執事
青木→特別救援部隊隊員




