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319.いつもの日常に⑨

 兄がドアに手をかけると、

「花ちゃん、今日は何でここに来たの?」

皇太子殿下の横で下を向き固まっている花ちゃんに声をかけました。兄さん!自分の愛する人に何て言い方してるんですか?と私は心の中でツッコミを入れました。それにしてもいつも花ちゃんに甘々な兄の様子がいつもと違い、なんだか冷たいことが引っ掛かります。すると花ちゃんは

「ごめんなさい。私たちの勝手な行動で正ちゃんやナヲさんに不快な思いをさせた上に迷惑をかけてしまいました。」

「俺は、ここに呼び出されたこと、皇太子殿下に特別部隊を助けてほしいと依頼されたことについて怒ってるんじゃない。俺は花ちゃんに怒ってんの!」

「え?私・・・?」

「花ちゃん、討伐部隊が出発してから笑ってないよ。あきちゃんや特別部隊の方たち、この国のことが心配でたまらないんでしょ。俺に助けてほしいんじゃないの?何で花ちゃんは俺に助けを求めないの?何で俺を頼ってくれないの?」

「だって・・・。」

「前にも言ったけど、僕は花ちゃんの笑顔が好きなの。花ちゃんに笑っていてほしいの。」

「でも、正ちゃんにもしものことがあったら・・・。私・・・。」

「俺は、花ちゃんのためなら死ねるよ。花ちゃんの笑顔を守れるならこの命喜んで差し出すよ。」

「正ちゃん!ごめんなさい・・・・。正ちゃん・・・助けてください。特別部隊が祠に着いた時にはもう祠の付近一帯は幽魔の群れであふれかえっていたと・・・。各地から神力持ちの騎士団員を集め援軍を送ってもどうにもならなくて。正直、正ちゃんが言ったように正ちゃんやナヲさんが祠に行ったとしても焼け石に水かもしれません。各地の幽魔被害もここ数週間で倍になっています。でも、いち早く祠を浄化するには二人に頼る以外、方法が・・・もう他に方法が思いつかないのです。」

「いいよ。」

「え?いいって・・・。」

「だから、宮崎に行くよ。」

「でも、正ちゃんには何の見返りも・・・・。」

「花ちゃん、俺が無事に帰ってきたら抱きしめてキスしてくれる?この前、天照の世界から帰って来た時にしてくれたでしょ。」

「え?!今、こんなところで・・。正ちゃん。ここには兄様も、ナヲさんもいるのよ。」

「で、花ちゃん、お願いできる?」

「・・ええ。もちろんです。」

「契約成立!いいよ。俺、宮崎に行くよ。ただナヲは未成年だし、俺みたいに宮崎に行く理由もない。ナヲには考える時間をくれないかい。」

「もちろんです。」

 二人のやり取りをぽかんと見ていた皇太子殿下は兄に

「さっきあれほど保障のことや、見返りについて気にされていたではないですか・・・。私はあなたの望む褒章は・・・。」

「別に要りませんよ。皇太子殿下に何かしてもらおうなんてこれっぽちも考えてないですよ。俺は花ちゃんから頼まれたから行くんです。」

「すまない。ありがとう。」

と言って皇太子殿下深く頭を下げました。すると花ちゃんが杖を使わずゆっくり歩いて兄のもとに向かうと兄の胸に飛び込んで泣き出しました。

「正ちゃん、ありがとう。ありがとう。でも、私、正ちゃんに何かあったら。生きていけない。」

「花ちゃん、泣かないで。俺を勝手に殺さないでよ。」

と言って花ちゃんの頬にキスをしました。


登場人物

小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。

角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。

小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。

小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。

小南カヨ子→ナヲの母。

皇帝陛下→角高順 光明の父。

皇后様→角優花 光明の母。

皇太子殿下→角光輝 光明の兄。(みっちゃん)

角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)

坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。

水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部

長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。

吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。

野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。

野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。

三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。

市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。

相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族

九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。

春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。

春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父

平川環→セイコウ出版社の社長。敏光の姉(フジの妹)。ナヲの伯母。

中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。

木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。

佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。

瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。

一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。

大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。

星野由美子→天文部、部長。

一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主

一ノ瀬サツキ→類の母

一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務

浜田さん→皇太子殿下角輝光の専属執事

三木さん→皇居の女中頭

井沢団長→近衛騎士団団長

鶴崎→光枝(花ちゃん)の専属執事

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