315.いつもの日常に⑤
「お疲れ様でした!お先に失礼します。これ、試作品のレポートです。確認お願いします。」
「はいおつかれさん!ナヲ、今日は馬車に乗って帰りなさい。あなた、足を怪我してるでしょ。平川環で予約して下で待たせているから。」
「おば様、ありがとうございます。」
と伝えると、私は部屋を出ました。
「馬車から夜の街を眺めながら帰宅していると。あきちゃんと二人で文化祭の後夜祭をした後、あきちゃんから頂いたドレスを着て2人で馬車に乗り、家まで帰ったことを思い出しました。来年も再来年も文化祭が終わったら後夜祭を二人でやろうって約束したのにな・・・。
・・・・。え?!
私はさっき、ほんとについさっき、出版社で、あきちゃんのことはもう忘れよう、頭を切り替えようって決心したばかりですよね。・・・・・そういえば、一昨日も病院のベッドであきちゃんとの関係をぐずぐず考えていましたよね。あーーーーもう。私はどうしたんでしょうか。恋する乙女って年齢でもないんですよ!私は私のできることを精一杯やる!!しっかりしなくちゃ。私は気合を入れるために頬を掌でパンパンと叩きました。
「ただいま帰りました。」
「おかえりなさい。遅くまでご苦労様。今、正二朗がお風呂に入ったところだから先にご飯食べちゃって。」
「わかりました。」
と母に返事をし、手洗いうがいをして荷物を置きに2階へ行きました。
私は台所へ行くと、
「ご飯用意できているわよ。」
「ありがとうございます。」
お盆に乗った食事を食卓へはこびます。今日の夕飯はさんまの塩焼き、豚汁、きゅうりとわかめの酢の物、それときのこの炊き込みご飯。仕事の日は帰りが遅くなるので一人で食事をします。
「今日は早かったな。」
父がそう言って、ウイスキーの入ったグラスととピーナッツが入ったお皿を持って食卓にやってきました。時計を見ると、8時12分。私は
「怪我をしているから馬車に乗って帰れって、環おば様が馬車を用意してくださったの。」
「そうか。」
「お父さん、環おば様に先日の幽魔退治の事話した?」
「あぁ、ナヲは剣の腕前を買われて、しばらく騎士団の訓練通うことになったからしばらく仕事は休むと伝えていたんだ。怪我をしたとは昨日姉さんから電話があった時に伝えたけど。」
「そっか。おば様が急にお父さんから話を聞いているって言われて、何の話かわからなくって慌てちゃった。」
「ごめん、ごめん。いくら身内とはいえ、理由なく仕事を休ませるわけにはいかないからね。」
「そうだったんですね。ありがとうございました。私は今回の件でそこまで頭が回らず、おば様に連絡すらしていませんでした。」
「仕方ないよ。色んなことがありすぎてナヲもそこまで頭が回らなかったんだろ。周南堂にも、竹男さんにもこちらから連絡してるから。」
「本当にありがとうございます。社会人として失格です。」
「いいんだよ。そのための親なんだから。もっと頼ってよ。それより、久しぶりの出版社の仕事はどうだった?」
「凄く楽しかったです。」
と食事をしながら父と、仕事の話や、学校の話をしていると、
「風呂上がったから、夕飯食べ終わったら入れよー。」
と兄が私に声をかけました。
「はーい。」
食事を終えた私は、食器を片づけ、お風呂に入りました。風呂上がりに足(傷口)の消毒をするため(消毒液が畳に垂れないように)夕刊を広げると、幽魔討伐の記事が載っていました。
「あきちゃん宮崎に行くんだ・・・。遠いな。」
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。(みっちゃん)
角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
平川環→セイコウ出版社の社長。敏光の姉(フジの妹)。ナヲの伯母。
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務
浜田さん→皇太子殿下角輝光の専属執事
三木さん→皇居の女中頭
井沢団長→近衛騎士団団長
鶴崎→光枝(花ちゃん)の専属執事




