3. 時は流れて
「おはようございます!」
「おはようナヲ。そして誕生日おめでとう!」
「おはようございますお嬢様。誕生日おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
12月13日は私の誕生日。年月が経つのは早いですね。私は5歳になりました。
今日の朝食は、ご飯と鮭の塩焼き、豆腐とネギとワカメの味噌汁、かぶの煮物に青菜のおひたし。かぶの千枚漬け。
「じゃあ、あなた。冷めないうちにいただきましょうか。」
「そうだな。それでは。合掌、いただきます。」
「いただきます!」
私の家族は両親に兄さんの4人暮らし。時々家政婦のエツ子さんが来て家事の手伝いなどをしています。(ちなみにエツ子さんは私を取り上げくださった道子さんのお母さんです。)
「父さん、今日はお昼前にみんなで三条様のお宅に伺うんですよね。僕は、母さんや、エツ子さんと一緒にナヲの誕生日会の準備をしていたのにな・・。」
「みんなすまない。今日は娘の誕生日だからと三条様の誘いを何度も断っていたんだがな。」
「太政大臣で華族の三条様がわざわざ平民の我が家にまで来てお願いされたのですからお断りなんてできないですよ。私の誕生日会はいつでもかまいません。それよりも、お父さんが三条様のお誘いを断っていたことの方が問題です。もし無礼だと罰せられでもしたらどうするんですか!!」
「すまない。この件は三条様のがいらっしゃった一昨日、カヨ子さんにもしっかりお説教されているから〜。も〜勘弁してくれよくれよ〜。」
「太政大臣の三条様がわざわざご自宅に招待してくださるんですよ。名誉なことです。留守番は私に任せて楽しんできてください。」
「エツ子さん、家のことよろしくお願いしますね。」
「お任せください。奥様。」
三条礼司様は華族で、日之本帝国の上院(政府の最高機関)の太政大臣です。一昨日この三条様が、わざわざうちまでいらっしゃって、お誘いに来られたんですよ。平民の政府のいち役人である部下の家族を家に招待すること自体が異例ですし、わざわざうちにまでいらっしゃってお誘いいただくことはとってもとっても異例なことなんです。
私が転生した日之本帝国の政府の仕組みを簡単にご説明しますと、
日之本帝国の政府は、皇帝を頂点にして、上院(政府の最高機関)と下院(行政や立法の補助)に大きく分かれています。
上院→トップは太政大臣。その下に右大臣と左大臣。その下に参議。
下院→開拓省・宮内省・司法省・文部省、工部省,兵部省・大蔵省・外務省・神祇省・立法省(長官と次官からなる)
となっています。
そして、この日之本帝国には身分制度のがあり、上から皇帝(皇族)→貴族(貴族階級には同等の地位で華族と士族)→神官→平民と分かれています。
我が家は代々の出版社(製本業や本屋経営など本に関わることほとんどを手広く)をやっています。事業も順調で、平民ですが裕福な暮らしをしています。父は帝国のために自分の力を活かしたいと工部省の官僚になったので、出版社はおばの環さんが跡を継いで社長となり、父は副社長として環さんのサポートをしています。(この国の公務員は、副業は禁止されていないんです。)
私は前世からジャンルを問わず本が大好きです。この世界には絵本や小説はあったのですが、漫画はありませんでした(もちろん漫画も大好きです。毎週お気に入りの女性誌や少年誌、青年誌を読んでいました。)ので、父に漫画のことをお伝えし、出版してほしいとお願いしましたら大ヒット!昨年は、うちの出版社から出している絵本や漫画のグッズ展開の提案をしましたところこれも大ヒット!その結果、(環さんの熱烈なお誘いを断りきれずに)4歳の私はセイコウ出版社の企画部部長に任命されました。だから私は週に1回出版社に勤務しています。(大人になりましたら、孫やひ孫が熱中していたBLや百合などのジャンルも提案させていただこうと思っています。流石にこの年齢では提案できかねます。)ちなみに今は、漫画や絵本の原案制作と、この世界にはまだない漫画喫茶と(グッズの販売方法として)ガチャの企画を立ち上げすすめているところです。
(この国では子供(14歳までは)の労働は、1週間に18時間以内であれば認められています。学業と健康面を配慮しているそうです。)
「ご馳走様でした。」
「さぁお嬢様、準備をいたしましょう。」