29.考えが追い付かない
昼休みが終わり、私はあきちゃんと一緒に教室前まで戻って来ると
「おかえり〜!」
「おかえりなさい。」
と笑顔のかえでさんと富さんに迎えられた。
「しっかり話せたか?」
「困ったことがあればいつでも相談にのるから。」
隆くんと信くんが声をかけてくれました。
なぜかみなさん嬉しそうにしています。
廊下にいらっしゃった人たちやクラスメイトたちは私たちがどのような話をしたのか気になっていたようですが、皇子との個別の対話を聞くことは不敬であるとみなさんわかっているようで、私を見て複雑な表情をされていました。
あきちゃんと花ちゃんは皇族。そうなると兄と花ちゃんの約束はどうなるのかしら。兄は男前で文武両道、性格も穏やかでとても優しく私の自慢です。身分関係なくモテモテで、ラブレターやプレゼントが自宅によく届いています。私自身、兄宛のラブレターや、プレゼントを預かったことは数えきれないくらいあります。そんな非の打ち所がない兄でも、貴族になれたとしても(この世界では、兵部省に入り功績をあげ、剣術大会で優勝し、大勲位最高戦士賞を取れば貴族になれる)皇族と結ばれるのは難しいのではないでしょうか?もう花ちゃんと兄は再開したのかしら?平民の私たちが今後も皇子であるあきちゃんや皇女である花ちゃんとこれまでのまま関わっていってもいいのでしょうか?兄さんは花ちゃんが皇族であっても兵部省に入るのかしら?
進路のことといえば私も2学期の間に決めなくてはならないのですが・・・。
それにしてもあきちゃんが男性だったなんて・・・。私、ちっとも気が付きませんでした。
なんだか色々ありすぎて頭の中がぐるぐるしてきました。
・・・・・・・・・・なんだか頭がふらふらして・・・ドサッ。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲの幼馴染。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。




