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28.2人きりの昼ごはん

 私と皇子は渡り廊下近くの階段で2人でご飯を食べることになりました。警備員の方々が他の生徒が邪魔をしないように見守ってくれているようです。


「このパン全部もらってもいいのかな?みんなで食べるんじゃなかったの?」

「大丈夫ですよ。このアンパンのあんこおいしいですよ。」

皇子は私からあんぱんを受け取ってパクリ。

幸せそうにアンパンを食べている顔は小さい頃のあきちゃんです。

「周南堂の和菓子は日本に帰ってからまだ食べていなかったからね。やっぱり周南堂のあんこが1番おいしいな!」

「やっぱりあきちゃんなんですね。」

私の口からつい漏れてしまいました。

「そうだよ。あきちゃんだよ。びっくりさせたくてこの学校に入ることも、いつ帰ってくるかも内緒にしてたんだ。ナヲちゃんは私に気づいてくれないんだもん。寂しかったよ。」

皇子はわざとシュンとした表情をしています。

「当たり前です。私はあきらちゃんとしか名前を聞いていなかったですし、ましてやあきちゃんと花ちゃんが皇族の方だなんて思っていませんでしたし。それに私はあきちゃんが女の子だと思っていました。きっと兄も、ゆずちゃんも、涼くんもそうだと思います。」

「えっ?女の子?」

「小さいころのあきちゃんは美少女そのものでした。名前も明って男の子にも女の子どちらでもある名前でしたし。」

「私たち皇族は中等教育学校を卒業する年齢になるまで本名を使わないんだ。誘拐や何か事件に巻き込まれないようにね。だから、本名の『光明』とは名乗れなかったんだよ。それにあの頃、私は口がきけなかったからね。・・・名前は仕方ないとして、私はいつもズボンをはいていたよね。」

「はい。そうですね。でもあの頃は花ちゃんもズボンをはいていましたし・・・。私は、あきちゃんは傷跡を気にしてスカートをはかない花ちゃんに気を使っていつもズボンをはいているのだと思っていました。・・・って私、さっきから混乱して、帝国の皇子様に対してあきちゃんって言っていますよね。ごめんなさい。」

「学校では身分は関係ないよ。それとナヲちゃんには名前で呼んでほしい・・・。」

「他の方の手前、それはよくないと思います。みなさんと同じように角様と呼ばせてください。」

「じゃあ、姉さんや正ちゃん、涼くん、ゆずちゃんと一緒にいる時と2人でいる時は名前で呼んで。私たちが辛い時に仲良くしてくれたみんなと距離ができてしまうのは辛いからさ。」

「はい。じゃあ、その時はあきちゃんって呼ばせてもらいますね。」

「・・あっ。そこは光明じゃないんだ・・・。」

「えっ?」

「いやっ。なんでもない。それとさ・・・、私が君に渡したプレゼントの指輪のこと覚えてる?」

「もちろん覚えていますよ。桜の花が好きな私にあきちゃんが指輪を選んでくれたんですよね。とても嬉しかったです。ただ大人用だったから大切に引き出しにいれていますよ。」

「私があの時送ったあの指輪は・・


キーンコーンカーンコーン


「ごめんなさい。今なんて?予鈴で聞こえなくって。」

「何でもない。」

「もう5時間目が始まりますから、戻りましょう。」

「わかった。戻ろう。」





登場人物

小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。

角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。

小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。

花ちゃん→角光明の姉。

坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。

水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部

長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。

吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。

野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。

野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。

三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。

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