279.親離れ㉛
「お願いします!!」
私は緊張からか昨日の出来事の影響からか早くに目が覚め(5時)、ぼんやりしていても落ち着かなくなり勉強をしていたら皇太子殿下から朝稽古のお誘いをしてもらい、今に至ります。井沢団長と大川さんも一緒です。
私達4人は基本稽古2時間みっちり行いました。練習が終わると、井沢団長は
「少しは気持ちが晴れましたか?」
と尋ねられました。私はなぜこのようなことを団長がおっしゃるのか分からず
「え?」
と聞き返すと、井沢団長は
「皇太子殿下がナヲさんが元気がないから気晴らしに朝練をしないかと提案されたんですよ。」
と教えてくれました。大川さんは、
「久しぶりに一緒に手合わせできて楽しかった。昨日は仕事で練習に参加できなかったから残念に思っていたんだよ。」
とおっしゃいました。その後私達は4人で朝食を摂り、私と皇太子殿下は部屋に戻りました。
部屋に戻ると浜田さんは
「昨日も一昨日も傷の診察を受けられていないでしょう。今、先生がいらっしゃっているから見てもらってください。」
と言ってソファーに座っている先生のもとに誘導されました。先生は
「もう痛みとか全くないの?毎日診察する様にと言われてだけど、一昨日と昨日の診察がキャンセルされたからさ。」
と言いながら包帯を取ります。私は
「もう痛みはありません。」
と答えました。先生は
「うん。問題ないね。抜糸しよう。」
と言って抜糸をし消毒をしました。
「これでおしまい。若いから傷の治りも早いね。ただ傷跡跡は残ってしまったね。」
とおっしゃるので、私は
「大丈夫です。私は気にしないので。」
と言うと、先生は浜田さんと部屋を出て行きました。
皇太子殿下は、
「今日は学校はガス管の破損で休校ということになっている。生徒も教員も朝から誰も来ていない。だから、先発隊は午後2時に学校に向かい校内の調査に入り、私達本隊は、午後6時に家庭科室に集合という流れになっている。ナヲさんのご自宅にも寄ってから学校に向かうので、こちらの出発を16時半にと思っているんだけどいいかい?本当ならご家族との時間をゆっくり作ってあげたかったんだけど、今日は作戦会議や公務で忙しくて。今日は私がナヲさんを連れ回すことになりそうなんだ。こんな時に悪いね。」
と申し訳なさそうに微笑みました。私はあきちゃんと顔を合わせるのも気まずかったので
「わかりました。むしろ忙しい方が気が紛れて、助かります。」
と答えました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。(みっちゃん)
角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務
浜田さん→皇太子殿下角輝光の専属執事
三木さん→皇居の女中頭
井沢団長→近衛騎士団団長




