27.皇子と昼食
「じゃあ、ナヲさんのお父様が上司の三条様に誘われてナヲさんの家族が三条様のお宅に招待された時に出会われたんですね。」
「へぇ〜、角様はゆずとも友達なんですね。角様がお召し上がりになってるパンも周南堂のですよ。毎朝ゆずが購買で販売してるんですけど、10時頃には売り切れて店じまいしています。あっ、この焼きそばパンも美味しいんですけど、甘いパンもおすすめです。」
「これは君たちのパンじゃないのか?」
「俺たちは弁当持ってきてるし、遠慮なく食べてください。こいつらは放課後しょっちゅう寄り道して周南堂に行ってますから。」
「私は、周南堂の皆さんにも幼いころお世話になったんだ。昔、ナヲちゃんの家に行くたびにお菓子を買っていたんだ。周南堂への寄り道。今度私も誘ってくれないか。」
「ぜひぜひ、ゆずも喜びます。」
頭の整理ができない私をよそに、皇子は、富さんとかえでさんと信くんと親しく話をしています。
私たちの様子を他のクラスメイトと廊下にいるたくさんの生徒たちと警備員の方たちが見つめています。
「何かすごいことになってるな。」
隆くんの耳打ちに
「そっ、そだねー。」
と返すのが精一杯でした。
私が混乱して固まっているのを見た皇子は
「ナヲちゃん元気がないけど大丈夫?私が戻ってきたのは迷惑だっただろうか?」
「そんなことありません!ただ、正直に言うと驚きすぎてどうしたらいいかわからなくなっています。」
皇子は私の顔を見つめて、優しい顔で聞いてくれます。
「せっかくだし久しぶりに2人で話してきたらどうだ?」
「そうよ。とりあえず、天気もいいし、渡り廊下の階段で食べておいでよ。」
信くんと富さんが提案してくれて、
「はいはい、これナヲの弁当と水筒。このパンは角様に私達からプレゼント。」
「これ、俺が、買ったんだけど。」
「細かいことはいいの!」
信くんとかえでさんが私と皇子に弁当とパンを渡し、
「はいはいっ。どいて、どいて!」
と隆くんと信くんが私たちを誘導してくれます。
振り返ると、富さんとかえでさんがガッツポーズをして見送ってくれていました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲの幼馴染。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。