269.親離れ㉑
「お見事です。」
と言って大川さんは粘土の切り口を見ています。そして
「柄の太さもこれで問題なさそうですね。抜刀もスムーズだったし。刀の鞘の神力装置の重さは気になりませんか?二つ分だからちょっと重たいんじゃないかなと思うんですが・・・。」
と尋ねると、皇太子殿下は
「そこまで気にならないよ。大丈夫。これでいくよ。」
と言って刀を大川さんに渡します。
「ありがとうございます。刀がきれいになるまで1時間程かかりますからこちらに。」
と案内されて工房に戻ろうとした時、大川さんのお父様と、あきちゃんが工房から出てきました。あきちゃんは
「ナヲちゃんも兄様も刀の試し切りが終わったの?」
と尋ねます。
「ああ。」
と皇太子殿下は答えます。そして
「ナヲちゃん。光明の試し切り見ていこう。大川くんいいかな?」
と言うと
「構いませんよ。こちらに。」
と丸椅子を出してくれました。
あきちゃんは
「ナヲちゃんが見ていると緊張するな。」
と言いながら抜刀をしました。あきちゃんは神力が宿った刀を見つめます。そしてあきちゃんはゆっくりと中段に構えます。
「やー!」
と言って飛び上がり粘土の真上から真下へすーっと刀を入れ、粘土を真っ二つにしました。粘土は中心から左右に割れています。あきちゃんの剣の腕前もなかなかです。大川さんのお父様は
「きれいに切れていますね。もう少し重たい刀でもいいかと思うのですが試してみませんか?」
と尋ねましたが
「いや、長期戦になったときは軽い方が戦いやすいと思うからこれにします。」
と答え、刀を大川さんのお父様に渡しました。
「では、皆さん中に。」
大川さんのお父様に案内されて大川さんの家でしょうか?工房の隣にある家の応接間に案内されました。そこにはすでに兄と一ノ瀬さんがいてお茶を飲んでいました。
「刀と防具が仕上がるまで1時間ほどかかりますので申し訳ありませんがここでしばらくお待ちください。」
と言って大川さんのお父様は部屋から出て行きました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。(みっちゃん)
角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務
浜田さん→皇太子殿下角輝光の専属執事
三木さん→皇居の女中頭




