263.親離れ⑮
「いらっしゃい。久しぶりだね。」
大川武器防具店に着いた私たちを大川さん(訓練の試合で戦った。)が出迎えてくれました。すると皇太子殿下は
「彼には今回の事情は話してあるし、家庭科室に行くメンバーの一員でもあるから、今回の件を話しても大丈夫だよ。」
と言いました。私は
「突然無理なお願いをして申し訳ありません。あの試合の決勝戦の時に大川さんに木刀を削って頂いたので、疲れていても戦えたから、今回もお願いでなきないかと思って、わがままを言いました。」
と頭を下げると
「大丈夫。事情が事情だし。それにナヲさん、怪我をしているんだろ、時間がないけどできる限り調整するから。もう、光明様と一ノ瀬さんは中で武器と防具の調整をしているよ。さっ皆さんも中に。」
と言って私たちを工房の中に案内をしてくれました。工房の中はトンカチが金属を叩く音や、機械の動く音など色々な音で溢れています。大川さんは、それらに負けない声で、
「皇太子殿下は光明様の後に父が対応いたします。こちらにお掛けください。」
と言って応接セットのソファーに案内をしました。そして
「正次朗さんとナヲさんの防具は私が担当します。お2人とも身軽なので、防御力は下がりますが革製の鎧の方が戦いやすいのではないかと思うんだけどどうですか?特にナヲさんは女性だし、鎖帷子や鉄製の防具だと重たくて本来の力を出しづらいんじゃないかと思うんだよね。正次朗さんは、皮の防具だけ、もしくは胸部だけ鉄にするとかの方がいいかな。ちょっと鉄の胸当て着てみて。」
と言って兄に鉄の胸当てを着けました。すると兄は鉄の胸当てを着て2、3ほど跳ねると、兄発
「大川さんの言う通り重たくて動きづらいかな。防御力が落ちても相手の攻撃を避けなが身軽に戦うほうが俺には合っていると思う。」
と言うと、大川さんは、兄に
「じゃあ今使っている防具を調整して、胸部を厚く仕上げたらほんの少しは重くなるけど安全性は上がるからそうしよう。それと刀だけどこれから1から作る時間はないから持ち手の部分だけ調整しよう。刀は兄さんが担当するからそっちで合わせてね。」
と言うと、続けて、
「兄さん、正次朗さんの刀お願い!」
と機械の音に負けないように大声で叫びます。そして大川さんは、兄をお兄さんの所に案内しました。
大川さんは戻ってくると
「お待たせ。さっ、始めようね。ナヲさんの防具は今訓練で使ってるものをそのまま使って、けがをしている小手の部分を調整しよう。この前試合を見た限りではこれより重いとパフォーマンスが下がると思うんだよね。ちょっと防具を着てみて。」
と言われたので、私は制服の上から防具を着ました。
「当日は制服で社の世界に行くの?それとも道着?」
と大川さんに尋ねられたので、
「学校で道着に着替えようと思っています。」
と言うと、
「防具は体にもピッタリ合っていたから。怪我をした左手の小手の部分をやわらかい皮に張り替えて、少し厚くしよう。あとは刀だね。刀も引き続き僕が担当するからよろしく。」
言って頭下げました。
「こちらこそよろしくお願いします。」
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。(みっちゃん)
角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務
浜田さん→皇太子殿下角輝光の専属執事
三木さん→皇居の女中頭




