252.親離れ④
私たちは実験を始めました。学校生活でどうしても離れなくてはならない場面、そうそれは着替えとトイレ。かえでさんが
「まずトイレで実験しましょ。この時間は誰もいないから今のうちに。」
と言うので早速やってみることにしました。女子トイレの入り口の扉を開けて中に入り扉を閉めました。(これは大丈夫そうですね。)さらに個室の扉を開け中に入って扉を閉めたとたん、みんなのざわつく声がしました。富さんが
「早く戻って来て。」
と言うので、慌てて廊下に戻りました。すると
「落ち着いた。何とか大丈夫そう。」
と皇太子殿下がほっとした表情で言います。結構ギリギリの状態だったみたいですね。私は
「私が手前の個室に入って、女子トイレの入り口の扉を少し開けて、みっちゃんがトイレから離れてみたらどうかしら?」
と提案し、実際にやってみたら。
「問題ないみたいよ。」
というかえでさんの声がしました。それから少しずつ距離を開けていくと、トイレから離れて窓際まで来ても大丈夫であることがわかりました。私がトイレから出てくると信くんが
「とりあえず、トイレに行くときは教室のある東棟じゃなくて、北棟のトイレでみんなで連れションしようぜ。」
と言うとかえでさんが、
「そんな日もたまにはいいわねー。」
と言って笑っていました。かえでさんの心の広まさにはいつも救われます。ありがとうかえでさん。
その時、予鈴が鳴ったので私たちは急いで教室に戻りました。
ホームルームが始まり先生は早速皇太子殿下をみんなに紹介しました。
「今日からうちのクラスで一緒に勉強する春日光輝君くんだ。春日くんは病気で3年間入院して今日から復学をしたわけだが、まだ退院したばかりで体調も完全に戻っていないだろうから、みんなでフォローしてくれ。」
と伝えると、皇太子殿下は
「春日光輝です。よろしくお願いします。」
と言って一礼をしました。その瞬間女子生徒がざわつき始めました。皇太子殿下は容姿端麗ですし、大人の色気も漂っていて素敵ですよね。わかります。わかります。すると先生が
「席はナヲさんの隣です。」
と言うと、女子生徒たちが「ナヲさんいいなー。」とか「うらやましい。」とか色々おっしゃっています。そして追い打ちをかけるように先生が、
「春日くんはナヲさんの親戚で、体調が悪い時や困ったときは相談しやすいだろうから・・」
と先生が話をしている途中で女子の皆さんは「うそー。」とか「ナヲさんこんな素敵な親戚がいるんなら文化祭に連れてきてほしかったー。」とか言って盛り上がっています。これはあきちゃんのように休み時間のたびに女子生徒たちに囲まれるんでしょうね・・・・。
「はぁ~。」
私はこれからのことを考えるとため息が出てしまいました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。(みっちゃん)
角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務
浜田さん→皇太子殿下角輝光の専属執事
三木さん→皇居の女中頭




