233.八咫烏㉟
私があきちゃんに謝るとあきちゃんは
「ううん。私が悪いんだ。ごめん。ナヲちゃん。兄様と私のことを心配してくれてありがとう。」
「うん。せかっく皇太子殿下が元気になったんですもの。あきちゃん、今まで我慢していた分たっぷり皇太子殿下に甘えてください。きっと皇太子殿下は受け止めてくれますよ。」
「じゃあ、ナヲちゃんは受け止めてくれる?」
「え?」
「冗談だよ。」
とあきちゃんは少し寂しそうです。私とあきちゃんは姉妹(幼いころはあきちゃんを女の子だと思っていましたから)のように育ったのに、あきちゃんが男性で皇族だと知って私が距離をとったのは事実です。それに皇帝陛下や皇后様、皇太子殿下にお会いしてますます住む世界が違うと実感してしまいました。私の考えが行動に出てあきちゃんを傷つけたのかもしれません。
「あきちゃん、ごめんね。私も受け止めますから。何かあったら頼ってください。」
と伝えると、
「じゃあ、今から甘えていい?」
「え、ええ。」
「じゃあ、こっちに来て。」
と言うとあきちゃんは私を手招きし、膝の上に座らせました。え?普通逆じゃないですか?前世で子供や孫たちが私に甘えたい時には私が座っている膝の上によく座りに来て本読んでとかお話ししようとか言って甘えてきたんですけど。今は私があきちゃんの膝の上にいます。私が戸惑っていると、あきちゃんは
「このままセーターの続きを編んで。」
と言うので、私は時間まであきちゃんとたわいもない話をしながら編み続けました。
「あきちゃん、そろそろ寝ましょう。」
するとあきちゃんは
「え~。もうこんな時間?なをちゃん。一緒に寝る?」
「お誘いはありがたいのですが、ご遠慮します。」
「そっか。残念。おやすみナヲちゃん。」
と言ってあきちゃんは私を膝から降ろすと私のスペースから出ていきました。
「おやすみなさい。あきちゃん。」
私は布団に入り目を閉じました。私は疲れていたのかすぐに眠ってしまいました。
後書き
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。(みっちゃん)
角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務
浜田さん→皇太子殿下角輝光の専属執事
三木さん→皇居の女中頭




