22.時は流れて④
「おはようございます。信くん。今日は早いのね。」
「おはよう、ナヲ!・・・実は、数学の宿題わかんないところがあって終わらなかった~。すまん。ノート見せて!」
「もう、しかたがないなぁ。」
「ありがとう!ナヲ! 後でアンパンとメロンパンおごるから。」
「別にいいよ。夏休みは柔道部の練習で忙しかったんでしょ。」
そんな話をしながら、今朝は信くんとお勉強です。
私は前世で小学校しか出ていませんので、学校に通えることがうれしくて、守衛さんが門を開ける始業開始1時間前くらいには学校に来て予習、復習をしたり、図書館で本を読んだりしています。
20分くらいすると、富さんがやって来ました。
「おはようございます。あっ、信くん宿題やってなかったの?」
「数学、難し過ぎんだよ。問題用紙見つめるだけで眠くなんだもん。」
「ナヲさんは、英語の予習?感心感心。」
「えぇ。新しいところの訳だけやっておこうと思って。」
そんな話をしていたらクラスメイトたちも登校してきました。
「信、夏休みの宿題、ナヲに見せてもらってんの?」
「あ~ほんとだ!宿題くらい自分でやんなさいよ!ナヲ、夏休みに遊びほうけてたやつを甘やかしたら癖になるわよ!」
隆くんとかえでさんも登校してきました。
信くん、富さん、隆くん、かえでさんにはいつも仲良くしていただいています。
みなさんを紹介しますね。
坂上信雪くん。貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。強柔道部期待の星です。
水木富さん。貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部。周南堂の常連さん。
富さんと信くんは幼馴染です。
長井隆くん。平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商をされていて、仕事を手伝っていた隆くんは英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしています。現在学生寮で暮らしています。
吉田かえでさん。平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
彼女とは初等、中等教育学校も一緒だったので旧知の仲。貴族と平民とのいざこざを解決すべく入学当初のパトロールはふたりで始めたものです。
私たちが仲良くなったのはこのパトロールに信くんが賛同してくれて、そしたら信くんの幼馴染の富さんも参加してくれて仲良くなりました。隆くんは高校の入学式の1週間前からうちのセイコウ出版社でアルバイトを始めたことがきっかけで知り合い、同じクラスになったことがきっかけで、いつの間にか隆くんと他の三人も仲良くなりました。
「あ~!何とか終わった!サンキュウ、ナヲ!パン買いに行くぞ!」
「俺は焼きそばパンで。」
「じゃあ私は、カレーパン。富ちゃんはドーナツでいいよね。」
「うん。今日はプレーンの気分かな。 」
「おいおい。何でお前らにまで買うことになってんだよ。」
「細かいことは気にすんなって!」
結局5人で購買に行くことになりました。
「おはよう!」
「いらっしゃい!今日は朝からおそろいで。」
「おはよう。ゆずちゃん。」
ゆずちゃんは中等教育学校卒業後周南堂で働いていて平日は帝校の購買で周南堂のパンを売っています。始業開始30分前から売り切れるまで。だから毎日11時前には店じまいしてしまいます。(ゆずちゃんは
昼から周南堂の店舗で働いています。
「今日はナヲに世話になったんでな。アンパンとメロンパンと焼きそばパンとカレーパンとドーナッツ。」
「え?俺たちの分まで買ってくれるの?」
「信くんいいの?冗談だったんだけど。」
「夏休みに試合の応援来てくれただろ、差し入れもたくさんもらったしな。」
そんなことを話していると
「そうそう、今日誰かお偉いさんが来てるみたいよ。業者搬入口がある北門に警備員が20人くらい集まっていたのよ。」
「講演会の予定とかあったっけ?」
「始業式あとは通常授業のはずだけど・・・。」
キーーーンコーーーンカーーーンコーーーン!!
「予鈴が鳴ったから戻るね!」
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。強柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲの幼馴染。