215.八咫烏⑰
うちに到着すると兄が出迎えてくれました。
「おかえりー。」
と言いながら玄関にやってきた兄は慌てて頭を下げました。
「頭を上げてくれ。正次朗くん、君の妹さんをしばらくお借りするね。
「はい。承知いたしました。」
と返事をしました。
私は皇太子殿下を部屋に案内して荷物をまとめました。皇太子殿下は教科書や参考書を段ボールに入れるのを手伝ってくださいました。
「お手伝いいただきありがとうございます。」
私は衣類を段ボールに詰めながらお礼をお伝えすると、
「ナヲさん、今日は本当にごめんね。こんなことになってしまって。それに私との結婚を強要してしまい君を困らせてしまった。」
「いえ。大丈夫です。でも皇太子殿下は結局は他の案を考えて下さったじゃないですか。」
「それは光明が考えた案なんだ。光明と君はとても仲がいいんだってね。私はこれまでずっと体調がすぐれなかったから、公務以外では休んでいることが殆どだったんだ。だから両親や兄弟とも仕事の話くらいしかしたことなくて。だから君と光明のことも知らなかったんだ。ごめんね。」
「私とあきちゃんのことですか?皇太子殿下に謝って頂くことって何かありましたでしょうか?」
「えっ?あぁ。一方通行ってことね。まだそれはそうとして、ナヲさん、私のことは名前で呼んでくれないかい?これから一緒に生活をしていくわけだからその方がいいかと思って。」
「承知いたしました。ではなんと呼べば?」
「んー、じゃあ私の名前は光輝だからみっちゃんで。」
「えっ!そんな皇太子殿下にそんな・・・。無理です。」
「光明のことはあきちゃんって呼ぶのに?」
「それは光明様とは幼馴染なので。申し訳ありません。あきちゃんと呼ぶのは2人の時、私の家族や幼馴染のいる友人達といる時と決めていたのですが。申し訳ありません。気が緩んでしまって・・・。」
「大丈夫だよ。君があきちゃんと呼んだのは光明が私の胸ぐらを掴んだ時くらいだよ。びっくりしてあきちゃんって呼んだんだなって。胸ぐらを掴まれながら光明がうらやましく思っちゃった。だから、ね、2人でいる時はみっちゃんでよろしく。」
「は・・・はい。」
私は了解するしかありませんでした。
後書き
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。
角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務




