210.八咫烏⑫
「ナヲさんすまなかったね。ナヲさんは将来何をしたいのかい。よかったら聞かせてもらえないだろうか?」
と皇帝陛下に尋ねられました。私は今現在の思いを伝えました。
「私は、今、伯母の経営しているセイコウ出版社で仕事をしているのですが、このままこの仕事を続けたいと思っています。これまでは娯楽としての本を作ってきましたが、これからは、経済的に学校に行けない方のためのテキストを作り、ラジオ局と協力して自宅で学べるような環境作りをしたり、テキストを買って頂いた方と先生が文通して学ぶという通信教育の仕組みを作ったりと本を主体とした学習のシステム作りをしたいと思っています。」
「それは素晴らしい。君はそんなことまで考えているのか?」
(この世界にはこの様な仕組みはありませんからね。私も前世では赤インク先生に大変お世話になりました。)
「はい。」
「これは今直ぐにも始めてほしい。セイコウ出版社だな。文部省の協力が必要な時に直ぐに対応するよう、私から根回ししておこう。」
「ありがとうございます。」
とお伝えすると、皇太子殿下は
「出版社ではなく君の父上のように官僚になることに興味はないのかい?」
と尋ねられたので
「官僚になりたいとは思いません。すこし前までは、出版社で働くか伯父伯母の経営している金属加工の工場ので働くか迷っていたんですが。出版社であれは雑誌の付録などを付ける時に金属加工にも関われるかなって思いまして。やりたいこと2つを欲張ってやれるのがこの仕事かな?と欲張りな考えで出版社で仕事をしたいと考えています。官僚になるという発想自体ありませんでしたね。」
とお答えすると、
「へぇー。色々と考えているんだね。君のような面白い女性にこれまで出会ったことがなかった。突然このようなことを聞くのは失礼なことだとわかっているけれど聞かせてほしい。君にはもういい人はいるのだろうか?」
いい人?あぁ、恋人のことですね。
「兄様、いきなり何を?ナヲさんに失礼ですよ!」
あきちゃんが怒ったように皇太子殿下言いました。
後書き
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。
角光枝→角光明の姉。(花ちゃん)
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務




