21.時は流れて③
三条様は文部大臣だった20年くらい前、『学校教育制度』の改正時に法律『学びの場所である学校では身分差は無く平等である。』という法律を作った人でもあります。中等教育学校の公民の教科書に三条様の名前を見た時には大変驚きました。新入生挨拶の件も、どこかでききつけた三条様のおかげで私が無事に行うことができました。三条様は太政大臣として活躍されていますが、今も教育の分野でとても影響力のある方のようです。
私の通う『帝都高等教育学校』は日之本帝国で5本の指に入る優秀な学校です(因みに兄もこの高校の卒業生です)。この帝高(帝都教育学校)の学生は貴族が7割、平民が3割。やはり学習塾に通ったり、家庭教師を雇えたりする裕福な貴族の方々が多く通われています。私も前世で赤インク先生の教えを受けていなかったら合格することは出来なかった思います。・・・そう考えると兄は塾にも通わず家庭教師も雇わず夜遅くまで毎日努力を重ね、帝校に合格し、今は日之本帝国で一番難しい帝国大学に現役合格しているのですから本当に尊敬します。(兄は今大学2年生です。)口には出しませんが花ちゃんとの約束を実現しようと頑張っているのでしょうね。
ドイツに行った花ちゃんとあきゃんとは手紙のやり取りを続けています。花ちゃんとあきちゃんの家庭の事情で直接私たちが手紙を出すことができませんでしたので、三条様が私たちの中継地点になって下さり文通を続けています。どのような事情かは分かりませんが私も兄も三条様と、両親の様子から聞いてはいけない気がしましたので三条様に文通のことはお願いすることにしました。
ドイツに行った花ちゃんたちとは初めの2年くらいは2か月に1回くらいのペースで手紙のやり取りをしていましたが、花ちゃんたちは忙しくなったのか返事がだんだん少なくなり5年が過ぎたあたりから年賀状くらいしか来なくなりました。私たち兄弟はそれでもこのペースで手紙を届けています。それは三条様のお宅にお手紙を届けに行くと、とても喜んでくださるからです。三条様は花ちゃん達がいなくなって寂しいのでしょうね。いつももうすぐ2か月がたつというタイミングで土曜日と日曜日の予定を父に渡してくださいます。私たち家族はその予定に合わせて三条様のお宅にお邪魔して手紙をお渡ししていました。私が初等学校3年になったころからは路面電車が私たちの住む地区まで整備されましたので兄と二人で三条様のお宅に通っています。
1週間前に三条様のお宅に伺ったときに8月末にもかかわらず花ちゃんとあきちゃんから私たち宛に返事が届いていました。葉書には「もうすぐ日本に戻ります。」とだけ書いてありました。もうすぐ2学期夏休み中に会えればいいなと思っていましたがそれはかないませんでした。