205.八咫烏⑦
両親が落ち着くと私達は席につき一ノ瀬さんのお母様と女中さんがお茶を淹れてくださいました。すると、三条様がいらっしゃったようで、一ノ瀬さんのご両親が玄関に向かいました。
すると、制服のジャンパースカートの胸元から出て、座卓の上にちょこんと降りました。
「これが八咫烏かい?」
「あ、足が3本あるわ。」
と両親が興味深々でみつめます。
「カア。」
と鳴き私の元へ戻ってくると、私とあきちゃんの前を行ったり来たりしました。そして私の胸元からじゃジャンパースカートの中にはいるました。すると私の服の中で前に進もうとぴょんぴょん動いています。私の胸元は山形に膨らんだり戻ったりをくりかえしています。
「なに?あっちに何かあるの?」
と尋ねると、と三条様と皇帝陛下と皇后様、そして皇太子様がいらっしゃいました。お会いしたこともないのに皇帝陛下と皇后様、皇太子殿下だと私がわかつたのは御三方があきちゃんと花ちゃんに似ているからです。私達は立ち上がり礼をしますと、
「楽にしてくれ。とりあえず座ってから話そう。」
と陛下がおっしゃると、私達は頭を上げ皇帝陛下、皇后様、皇太子殿下、あきちゃんが上座に案内され御座りになられたのを確認してから座りました。陛下は私と一ノ瀬さんから話を聞きたいと上座近くの場所に座るよう指示をしました。それから陛下は部屋にいる警備員を外に出し襖を閉めるように指示をしました。そして皇帝陛下と皇后様と皇太子様は私と一ノ瀬さんに向かって頭を下げ、
「ナヲさん類くん光明を助けてくれてありがとう。そしてナヲさんには怪我をさせてしまい申し訳なかった。」
とおっしゃいました。
「頭を上げてください私は自分ができることをしたまでです。私の方こそ角様を危険なことに巻き込んでしまい申し訳ありませんでした。」
「私は小南さんに守ってもらっただけで何もしてはありません。」
と私と一ノ瀬さんは言うと、
「いや。昨日宮司から話を聞いた。きっとナヲさん、類くん、光明は八咫烏に導かれたのだと。さっきナヲさんが光明を巻き込んだと言っていたがそうではなく、こちらの事情にナヲさん、一ノ瀬くんを巻き込んでしまったんだ。すまなかったね。」
と再び皇帝陛下は頭を下げられました。
すると皇后様も
「本当にありがとうございました。ねえ、ナヲさんこのシャツのシミは昨日手を怪我した時のものですか?」
と尋ねられたので、
「はい。」
と答えると、
「ごめんなさいね。女の子に傷を負わせてしまって。これだけ血が出たのだから傷跡が残ってしまうかもしれないわね。本当に本当にごめんなさい。」
と頭を下げておっしゃられたので、
「私は傷跡が残っても気になりませんし、大丈夫です。」と答えました。
「でも・・・。」
私はピンときました。幼い頃花ちゃんが傷跡のせいで辛い思いをしてきたことを。だから皇后様はこんなにも私の心配をしてくださるんですね。
「本当に大丈夫ですから気にしないでください。」
と伝えました。しかし皇后様の表情は曇ったままです。私は話を変えようと、
「まだ八咫烏をお見せしていませんでしたね。」
と伝えると、
「さっきから君の胸元が気になっていたんだ。変な意味ではないよ。さっきから飛び出たり戻ったりを繰り返していて。それと、この部屋に入ってから体が軽いんだ。力もみなぎっている感じもするし。君の胸元に隠れているのが八咫烏かい?」
と尋ねられたので、
「はい。」
とお伝えしました。
「そういえば、光輝様の顔色が良くなったように見えますな。」
と三条様が驚いた様子でおっしゃられた。皇帝陛下も皇后様もあきちゃんも驚いた顔をして皇太子殿下を見ています。やはり八咫烏のひなは皇太子殿下に力を与える存在だったのですね。
後書き
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
皇帝陛下→角高順 光明の父。
皇后様→角優花 光明の母。
皇太子殿下→角光輝 光明の兄。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務




