204.八咫烏⑥
私達が客間に通されると、一ノ瀬さんと、一ノ瀬さんのおじい様が両親を連れてきました。
「ナヲ、大丈夫なのかい?」
「手を怪我したんですって?」
と部屋に入るなり私の元に駆け寄りました。
「大した事はありません。大丈夫です。昨日先生にも見ていただいて処置もしていただきましたし、お薬もいただきました。」
と伝えると、
「大丈夫じゃ無いわよ。このブラウスについているの血の跡よね。あなたは女の子なのよ。無茶ばかりして、傷が残ったらとか考えなかったの?」
「はい。心配をおかけして申し訳ありません。」
と謝ると、
「本当に申し訳ありませんでした。」
と一ノ瀬さんのご両親とおじい様、一ノ瀬さんあきちゃんが頭を下げていました。
「ナヲちゃんは私達を助けるために幽魔と戦ったんです。そして皇帝を導くといわれる八咫烏を助けてくれたんです。私に力がないばっかりにナヲちゃんに怪我をさせてしまいました。ごめんなさい。」
とあきちゃんが謝ると、一ノ瀬さんも、
「小南さんが戦っているのに何もできませんでした。本当に申し訳ありませんでした。」と謝ります。
「私が2人を危険に巻き込んでしまったんです。悪いのは私です。みなさんは悪くないんです。それに傷が残ったって構いません。私は元々職業婦人になりたいと思っていますから結婚願望はありません。もし結婚したい方が現れたとしても傷があるから結婚できないとおっしゃるような方とは結婚しても上手く行かないと思うんです。だから問題ありません。」
と言うと、
「はぁ。頼むから無茶をしないでくれ。」
と力無く言いました。
「はい。わかりました。」
と私は返事をすることしかできませんでした。
後書き
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務




