203.八咫烏⑤
私たちは社に向かいお参りをすると境内を散歩しました。八咫烏はずっとご機嫌で私の頭でぴょんぴょん飛び跳ねています。
「八咫烏さん肩に乗っていただけませんか?せっかく髪をきれいに結ったのにまたやり直さねければいけないじゃないですか。」
と伝えると
「カァー。」
と鳴いて私の肩に乗りました。八咫烏は境内の居心地がいいのかご機嫌です。私たちが大きな樟がありました。樟の前に行くと八咫烏が私の肩からとことこと体を伝って降り、樟を登ろうと木の幹を歩いて登ろうとしました。しかし途中でコテッっと落ちてしまいました。八咫烏はこの行為を何度か繰り返しています。私は落ちる八咫烏を受け止めては根っこのところで下ろしてあげました。
「あぁ、八咫烏の止まり木に興味を持ちましたか。この樟は初代皇帝の光様を導いた八咫烏が止まっていた木と言い伝えられています。」
「そうなんですね。この樟には八咫烏が好む何かがあるんでしょうね。」
「そうかもしれませんな。それはそうとナヲさんさっきはすまんかったの。急に結婚の話なんかして。類は角様が転校されるまで学校の話などほとんどしたことがなかったんじゃ。角様が八咫神神社のお孫さんだよねと話しかけてくれた。とか一緒に昼食を食べたや、文化祭のダンスパーティーに行ったなど少しずつ学校の話をしてくれるようになって。最近は茶道部の人と一緒に試験勉強をしていること、それがきっかけで茶道部に入ったことなども楽しそうに話してくれるようになっての。その中でナヲさんの話をよくしていたんじゃ。類は人付き合いがあまり得意では無いんじゃが、その類の会話に出てくるお嬢さんが、類の命の恩人で、この神社と縁ある八咫烏まで助けて家に来て下さった。となると運命を感じるじゃろ?」
「そうかもしれませんね。」
と答えると、あきちゃんが私の腕を肘で突きました。私は何か変なことを言ったでしょうか?
「しかし、運命は又、別のところにもあったようじゃな。さっそろそろナヲさんのお父様と、三条様が来る時間じゃな。家に戻るとするかの。」
一ノ瀬さんのおじい様と私達+1匹は一ノ瀬さんのお宅に戻りました。
後書き
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務
 




