202.八咫烏④
私はいったん部屋に戻りお財布をポケットに入れました。よし、小銭もちゃんと入っています。
「私は準備が整いましたが、あきちゃんは準備できましたか?」
と隣の部屋にいるあきちゃんに聞くと
「うん。できたよ。」
といって私の部屋に入って来た。そして、座っている私の前にしゃがみ
「私を仲間外れにしないでほしい・・・。それと、ほかの男性とデートしな・・・。」
「え?」
「だから、私以・・・。」
あきちゃんは黙り込んでしまいました。あきちゃんに嫌な思いをさせていたのですね。私は天文部の時もあきちゃんに隠し事をしようとしていましたし・・・。
「あきちゃんを傷つけてしまってごめんなさい。」
と謝るとあきちゃんはなぜか体育座りをして顔を伏せ
「うん。わかった。」
と言ってくれました。あきちゃんは耳を赤くしています。拗ねてしまったことが恥ずかしいのでしょう。大人びて見えてもまだまだ子供なんですね。思わずあきちゃんの頭を撫でてしまいました。サラサラな髪が気持ちいいです。あきちゃんが顔を上げたので私は立ち上がり
「行きましょう。」
と伝えると、
「ナヲちゃん、八咫烏がずっと頭に乗っていたでしょ。ちょっと待って」
と言ってポケットから櫛を出しました。
「ナヲちゃん座って。」
と言うと三つ編みのゴムを外し、ゆっくりと三つ編みをほどきました。そしてゆっくりと櫛で私の髪を解いてくれます。
「ナヲちゃんの髪、サラサラだね。」
と言うと後ろにいたあきちゃんは私の正面にきました。
「おさげじゃないナヲちゃんもいいね。」
と言ってニコッと微笑みました。
「あ、ありがとうございます。」
と答えると、
「私が髪を結んであげたいんだけど、どうやっていいかわからなくて・・・。」
と申し訳なさそうにあきちゃんは言います。
「ふふっ。自分で結いますから大丈夫ですよ。」
と答えると
「うん。」
と笑顔で答えてくれました。
後書き
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務




