201.八咫烏③
「ナヲさん、みんなが揃うまで時間がありますが、どうされますか?」
と一ノ瀬さんに尋ねられ
「私はまだ、ここの神様にご挨拶をしていません。だから神社にお参りさせていただこうと思っています。」
と答えました。すると、
「よかったら案内しましょうか?」
と提案いただき、
「ありがとうございます。ぜひお願いします。」
と答えると、
「ごほん、ごほん。」
あきちゃんがこちらを見ています。いつからここにいたのでしょう?気配を全く感じませんでした。
「お二人でどこに?」
あきちゃんはなぜか不機嫌な様子で尋ねます。
「角様も一緒にいかがですか?これから神社にお参りしようかと話していたんです。」
と一ノ瀬さんが言うと、
「私が行くとお邪魔だろうし、遠慮する。」
とあきちゃんはいじけたように返事をしました。
「角様もお誘いしようと思っていたんですよ。」
と一ノ瀬さんが言ってもあきちゃんはまだいじけて行かないと言っています。もしかしたら、寝不足でご機嫌斜めなんでしょうか?昨夜は夜中に勉強しましたし、そのままちゃぶ台で寝て疲れが取れなかったのかもしれません。今朝も眠そうでしたし。これから大事な話をすることですしあきちゃんは時間まで休んでいた方がよさそうですね。
「角様、昨夜はよくお休みになれなかったんでしょ。疲れていらっしゃるんでしょ。だからご機嫌斜めなんですね。話し合いまでに時間がありますからそれまでゆっくり休んでいてください。」
と伝え一ノ瀬さんに
「角様が来られないなら仕方ありません。神社の案内お願いしてもいいですか?」
と一ノ瀬さんにお願いすると、一ノ瀬さんは、
「あっ。すっかり忘れていた。母さんに準備を手伝うように言われていたんだ。角様もこの神社についてお詳しいからご一緒されては?」
「大丈夫です。角様はお疲れの様ですから私一人でお参りをさせていただきます。」
と伝えると、あきちゃんは
「私もいっしょに行く。」
と私の袖をつかみいじけたように言いました。
後書き
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。
一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主
一ノ瀬サツキ→類の母
一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務




