20.時は流れて②
初等、中等教育学校までは平民と貴族は別々の学校に通っていましたから、私の通っていた(平民の通う)学校は地域に住む顔見知りも多くわきあいあいとしておりました。だから、平民と貴族が一緒に通う高等教育学校に入学した時には驚きました。
高等教育学校の入学式では、平民の私か主席入学であったので新入生代表のあいさつをする事になったのですが、貴族のお偉い様が学校に抗議に来て大変だったそうです。その後も、『学びの場所である学校では身分差は無く平等である。』という法律に加え校則があるにもかかわらず、入学して数日は、貴族が平民に嫌がらせをするというイザコザが度々みられていました。
私はというと、入学式に来賓としていらっしゃっていた太政大臣の三条様と親しい平民ということで一目置かれたようで、嫌がらせを受けることにはなりませんでした。私が三条様に「貴族の○○さんが平民に嫌がらせをしていた」などと告げ口をされては大変なことになると思われたのでしょうね。私に対してだけは貴族のみなさんが大変友好的な態度をとっていらっしゃいました。しかし、私だけが平穏な学校生活を送っても楽しくはありません。平民、貴族関双方が身分差を気にせず切磋琢磨できて、楽しく通える学校でなくてはなりません。だから私は三条様との関係を大いに使い、『虎の威を借る狐』の狐になり休み時間や、放課後などに校内見学も兼ねて、友人らを引き連れいろいろなところに出没しては
「あれは2年生の○○様かしら?平民の方に何をなさっているのかしら?これっていじめでしょうか?」
「1年の貴族の○○様は平民の方に嫌がらせをするはずはありませんよね。」
などとわざと聞こえるように友人達と話をしては次の場所に行くことを繰り返しました。(前世では実家の旅館の仕事を手伝っていましたから、人の顔と名前を覚えるのは得意なんです。)これを数日間毎日繰り返しておりますと、学校では、平民に嫌がらせをすると三条様のお気に入りがどこからともなく現れるという噂が立ち、平民への嫌がらせが無くなりました。貴族の世界では人間関係、家とのつながりがとても大切であると初等、中等学校でしっかりと教えられるそうなので、帝高に入るくらいに賢い方々は自分の間違った行いが家に迷惑をかけてしまうとよくご理解をされているようです。
入学当初はこのようなトラブルもありましたが、今では平民も貴族関係なく友情をはぐくみ、平民だけでなく貴族にも 親しい友人もできました。クラスの雰囲気も仲も良く夏休みはみんなで勉強会をしたり、海水浴に行ったり楽しく過ごしています。