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184.夜の学校⑳

 部屋に入ると白衣を着たたくましい男性がお茶を飲みながら待っていました。

「よろしくお願いします。」

私が頭を下げると、

「はい。じゃあ、早速診察しようね。手を怪我したって言ってたね。見せてくれるかな。」

「わかりました。」

と言って信くんから借りたジャージを脱ぐと、一ノ瀬さんのお母さんは

「ひぃ。」

と小さく悲鳴を上げました。私の制服の白いブラウスが血で汚れているのでびっくりしたのでしょう。先生は私の傷口に巻いたハンカチを見て、

「奥さんすみません。お湯をたらいいっぱいに用意してもらえますか?」

と指示を出し、けがをした左側のブラウスの袖のボタンを外すと他に傷がないか確認しました。そして一ノ瀬さんのお母様は、お湯の用意を女中さんに頼むと戻って来ました。

「他に怪我や痛みのある場所は?」

「ありません。」

問診をした後、先生は、

「ここ、傷口にくっついているから切るよ。」

あっ、下には一ノ瀬さんのハンカチが、私はお母様に切ってもいいか確認すると、気にせず切ってと了解を得たので、切ってもらいました。

 先生お湯が届くと、その中に私の手を入れ、ゆっくりハンカチを剥がしました。たらいの水がだんだん赤く染まり、鉄の様なにおいがしてきました。

「この傷は、どこで?12、3センチの切り傷に、火傷?これは・・・幽魔?!どこで幽魔と?街中ですか?郊外ですか?騎士団には連絡を?」

立て続けに質問されてあの社での出来事は極秘事項ですし、なんて答えればと悩んでいると。一ノ瀬さんのお母様が、

「先生、この子は怖い思いをして怪我をしたんです。今はそっとしておいていただけますか。落ち着いたら騎士団に報告します。」

と言ってくださいました?おかげで深く追求されずにすみました。すると先生が

「ナヲさん。すまなかった。怖い思いをしたってっていうのに。」

「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」

その後傷の処置をしていただき手に包帯を巻いていただきました。

「抜糸は5日後に傷の状態を見て行うから。それと、これは抗生物質と痛み止め。抗生物質は1日3回食後に必ず飲んでね。5日分だしておくから。痛み止めは痛みのある時と熱が出たときに飲んでね。この袋に書いてあるからよく読んでから飲んでね。」

「わかりました。」


「ちょっと聞いていい?」

「今日、神力を使ったよね。」

「はい。」

「神力を使って体調に変化は?」

「いえ、ありません。」

「診察するからお腹出して。」

「わかりました。」

と服を脱ごうとすると隣からガタガタと音が聞こえてきました。一ノ瀬さんのお母様は

「ちょっと待っていくださいね。」

と言って部屋を出ていくと、隣の部屋から、

「お待たせしました。診察を始めてください。」

と声がしました。あぁ、そっか、八咫烏から私が見えるようにふすまを開けていましたもんね。一通り診察が終わると、

「体に打ち身があったので、湿布も出しておきますね。神力の使用による体内の異常はなしっと。」

「ありがとうございます。」

「入浴は傷口が濡れないように、それと長湯はしないでくださいね。それと湿布は風呂上りに。」

「わかりました。」

私は服装を整え、改めてお礼を言いました。



登場人物

小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。

角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。

小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。

小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。

小南カヨ子→ナヲの母。

花ちゃん→角光明の姉。

坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。

水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部

長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。

吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。

野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。

野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。

三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。

市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。

相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族

九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。

春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。

春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父

中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。

木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。

佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。

瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。

一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。

大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。

星野由美子→天文部、部長。

一ノ瀬雄太郎→類の祖父、八咫神神社神主

一ノ瀬サツキ→類の母

一ノ瀬勇→類の父、神祇省勤務

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