178.夜の学校⑭
あきちゃんが落ち着いたので私たちは、あきちゃんの意識がなかった時のことを尋ねました。するとあきちゃんは、
「なんか頭の中がボーとして。それで何かに呼ばれたんだ「こっちに来て。」「ここから出して。」って。そして気が付いたらここにいたんだ。」
とゆっくり説明してくれましま。すると、
「あ、また聞こえた。助けてって。」
とあきちゃんが言うと、私と一ノ瀬さんは同時に
「私はカラスの鳴き声が聞こえました。」
「社からカラスの鳴き声が。」
と言いました。
「・・・と言うことは、角様が聞こえる声と、私と一ノ瀬さんに聞こえるカラスの鳴き声は同一人物?カラス?生き物ってことですね。」
「そうだね。」
あきちゃんは私に優しく微笑みます。このような状況なのにあきちゃんは嬉しそうです。さすが男の子、このような状況にワクワクするんでしょうね。
「とにかく社に行ってみましょう。私は先に行きます。あきちゃんと一ノ瀬さんはついて来てください。」
「わかった。角様は私の後ろに。」
「ああ。」
私は、足元に転がっていた短くなったほうきを手に取るとゆっくり社に近づきました。
「さっきの嫌な感じはしません。大丈夫な気がします。」
するとあきちゃんは、
「ここはなんだか落ち着く。不思議だ・・。」
と言いました。
すると社からガタガタと音がしました。
私は二人を庇いながらゆっくり社の扉を開けると黒い掌くらいの小さな鳥が
「カア。」
と鳴いて、てくてくと近寄り社からこちらにぴょんと飛びましたが・・。飛べずにそのままポテっと床に落ちてしまいました。1メートル弱位の高さとはいえ、ひなにとっては命に係わるかもしれません。慌てて私はひなを拾い上げると、こちらを見て
「カア。」
と鳴き、私の手から腕を伝い肩に乗ると、また腕を伝って掌に戻ってきました。ひなは元気そうです。私はひなを観察すると足が3本あります。
「ヤタガラス?」
私が言うと、あきちゃんと一ノ瀬さんもひなをのぞき込みました。
「これは・・・。」
「これって。」
2人はひなを見ながら驚いてい固まっています。
「あなたはいったい何者なの?」
私はひなに尋ねましたが、
「かあ。」
と言うだけで答えてはくれませんでした。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。




