174.夜の学校⑩
「かえでさん、かえでさん!!どこですか?」
かえでさんの返事はなく、暗闇に声が響き渡ります。私は真っ暗な音のない世界に独り放り出されてしまったのでしょうか?みなさんは無事でしょうか?不安な気持ちになり、私は家庭科室から持って来たほうきを握りしめました。すると、
「その声は小南さん?」
「その声は一ノ瀬さん?」
すると、
「2人とも無事?」
というあきちゃんの声。
「よかった。お二人とも無事だったんですね。危険ですから目が慣れるまでしばらくその場で待機しましょう。」
「わかりました。」
と一ノ瀬さんが答えました。
だんだん目が慣れてきて、辺りがぼんやりと見える様になりました。この空間にいるのは私とあきちゃんと一ノ瀬さんだけです。私は2人のもとに歩いて行く途中、カラスでしょうか鳴き声が聞こえてきました。
「カラスの鳴き声が聞こえません?」
私が尋ねると、
「私も聞こえます。」
一ノ瀬さんが答えました。
あきちゃんは私の問いに答えず、なぜかボーっとしています。
「角様、角様、しっかりしてください!」
するとあきちゃんは私の声が聞こえないのか返事もせずに歩き出しました。
「角様角様!!!」
一ノ瀬さんはあきちゃんの腰に手をまわしラグビーのタックルの態勢であきちゃんを止めますが、あきちゃんはそのままゆっくり歩いていきます。
「一ノ瀬さん。角様は、カラスの鳴き声の方に行っていませんか?」
「そうですね。うわあ!!」
あきちゃんに振り払われ一ノ瀬さんは倒れました。
「止めようとしても無理っぽいです。角様に危険が及ばないように守りながら私たちもついていきましょう。」
「わかりました。小南さんは右側をお願いします!」
「承知しました。」
私たちはあきちゃんに背を向け周りからの危険に対応できるように、彼の歩調に合わせながらついて行きました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。




