171.夜の学校⑦
「ナヲさん、やっぱり角様や一ノ瀬さんにも話しましょ。」
「そうね。隠し事されるっていやよね。」
あきちゃんのただならぬ笑顔に負けて二人はあきちゃんに天文部からの依頼の件を話そうと言い出しました。
「わかりました。角様、角様は第二皇子でいらっしゃいます。もし何かあれば私たちも、私たちの家族も、学校も責任を取らなければなりません。そのことを十分に理解をした上で話を聞いてください。そしてどう行動するか考えてくださいね。」
私がそういうとあきちゃんは
「わかった。」
と真剣に答えてくれました。
私たちはお茶室に入り、天文部からの依頼の件をあきちゃんと一ノ瀬さんに説明をしました。
「なるほど。分かった・・・。」
あきちゃんはそう答えると、警備員の方に何か話をしに行き30秒くらいで戻ってきました。
「じゃあ、そろそろ始めましょうか?」
富さんは私たちに声をかけ、場の雰囲気を部活モードに切り替えてくれました。この中で富さんが天文部からの依頼に一番ワクワクしているのに。流石は部長です。
私たちは時間までしかっりお点前の練習をしました。
「6時半になりましたの今日の稽古はここまでです。皆さん片づけを始めてください。」
と富さんが私たち声をかけた瞬間、軽やかな身のこなしで、道具を片づけ、茶器を洗い、部屋を掃除し、お茶室はピカピカに。
「ねえねえ。今日の富さんすごいわね。これだったら富さんが退治のプロになれそうじゃない?」
「私もそう思いました。」
「じゃあ鍵を閉めますから、出てくださーい!」
と言って私たちをお茶室から追い出すと、
「じゃあ、角様、一ノ瀬君さよーならー!」
と言って私たちを引っ張って北棟の職員室へ行き、お茶室のカギを返却してから天文部にのいる屋上に駆け上がりました。その時間約1分。ありえないタイムです。
「お待たせしましたー!!」
富さんが天文部の皆さんに挨拶をすると
「お待ちしていました。ご協力ありがとうございます。」
と星野部長が私達にそう伝えると、続けて
「角様までお越しくださるなんて、申し訳ありません。」と頭を下げました。
「えー!!な、何で角様が?」
とかえでさんが言うと、
「誰にも迷惑はかけない。約束する。だから私も参加させてほしい。」
と頭を下げると、
「角様を止めることは誰にも無理かと思います。」
と一ノ瀬さんが遠い目をして言いました。
その時、
「すまない、遅くなって。」
と信くんがやってきました。
「信くん来てくれてありがとう。これでみんな揃ったわね。では、先輩方はいつも通り天体観測を続けてください。私達もここで星を見ながら異変があれば調査を開始します。」
富さんは先輩方にそう言うと、ノートを出して作戦会議を始めました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。
星野由美子→天文部、部長。




