17.幽魔
お伝えしていたかしら。
私がいるこの世界は幽魔が出るんです。私は幽魔を見たことはありません。新聞に載っていた被害者の方々の証言をまとめますと、影のような、煙のような黒いもやのようなもので、その幽魔が急に固くなり人を切ったり、熱くなって襲い掛かってきたりするそうです。
ところでみなさんは丑の刻参りってご存じですか?丑の刻(=午前二時ごろ)に神社に参詣し、自分の呪いたい人をかたどったわら人形を神木に釘で打ちつけると、七日目満願の日にその人が死ぬと信じられているんです。日之本帝国ではこの呪い、丑の刻参りによって人々の呪いが実体化し、最初の幽魔の発生に繋がったと言われています。
前世の世界では神力(魔法)はありませんでした。それに、私は幽霊や妖怪、魔物などには無縁でした(見たことも、気配を感じたことすらありませんでした)。戦争で、恐ろしい空襲の経験はしましたけれど、武器や兵器について詳しいわけではありません。今、兵部省の騎士団が神力を付与された刀や槍などの武器で戦っているそうです。直接魔物と戦うので怪我をされたり命を落とす方も多くいるそうです。幽魔と直接戦い人々が傷つくリスクを減らせないかと神力を付与された玉が出る鉄砲や大砲、ラジコンやドローンのように遠隔操作で幽魔と戦えないかなど父に提案をさせてもらったのですが、兵器や機械の仕組みはさっぱりわかりませんので、まったくお役にたてていません。
父は神力持ちなのでこの力を使い工部省て神祇省、兵部省の方々と対幽魔兵器を開発しています。最近幽魔関連の被害が増えた事で残業が増えています。私の前世の記憶で父の力になりたいのですが・・・。
幽魔は、人から出る神力(この世界の人は神力を身体で生成し汗のように放出している)が濃い場所が苦手だと言われています。だから人が多くいる帝都などの都市部は人口密度が高くなり、それに伴い神力が濃くなるので都市部では幽魔の被害はほとんどみられていないのですが、人口密度の低い街道や農業区、漁業区などで発生する人口密度が低い地域には、兵部省直轄の帝国騎士団が常駐し幽魔が発生した時に戦い人々を守っています(帝都などの都市部は警察隊が(前世の警察業務に加え幽魔退治の業務も担っています)。