157.中間考査⑥
放課後になりました。かえでさんと信くんから数学と国語を教えて欲しいと頼まれました。私たち旧ランチ仲間(かえでさん、富さん、信くん、隆くん)は放課後に勉強することになりました。
「今日から試験期間に入ったので、きっと図書館は満員御礼だろうな。」
と、信くんが言うと、
「私たちは茶道部だから、お茶室で勉強しましょう。」
と富さんが提案し、私たちはお茶室に行くことにした。
富さんは
「私、カギを取ってくる。」
と言うと職員室に向かいました。
私たちがお茶室の前で待っていると、
「お待たせしました。」
と富さんはあきちゃんと、一ノ瀬君を連れてきました。
「ここに戻る途中、お二人にお会いしたの。角様と一ノ瀬さんが漢文に苦戦されていると伺いましたので、一緒に勉強しないかとお誘いしたの。」
「そうなんっすね。ささっ。むさくるしい所ですが中にどうぞ。」
「信くん、むさくるしいなんて失礼でしょ!」
「ごめんごめん。」
私たちは、お茶室の中にはいり、折り畳みの座卓を3台出し、コの字に設置した。私はまずかえでさんと信くんに数学を教えました。
「aが歩の数のときは、不等号の向きが変わるんです。この例題を見ながら問3の①から④と問4の①から③を解いてください。わからなかったら飛ばして。終わったら呼んでくださいね。」
そして、私はあきちゃんと一ノ瀬くんの元に行った。
「漢文でしたね。」
「そうなんだ。この問題なんだ。」
「あぁ、この二重否定形ね。ここは読みが「せざるはなし。」となって、しないことはないと言う意味になるの。」
「ということはここは、でないことはない。という意味になるんですね。」
「そうです。一ノ瀬さん。否定を重ねると「〜しないものはない」ということは、いこーる、すべて〜すると言う強い肯定を示す句形になるんです。」
「なるほど。よく分かりました。では、この問題を解いてみます。」
「わかりました。終わったら見せてください。」
「角様はどうですか?」
「ごめんなさい。正直なところよくわからなかった。ずっと独逸の学校にいて、この高校にに入学してはじめ漢文を習ったんだ。今、家庭教師に帝国の中学生が習う所を教えてもらっているところでまだ試験範囲の所まで追いついていなくって。」
「じゃあ、このレ点の一文は読めますか?」
「備へ有れば患ひ無し。」
「ではレ点が2つ以上続いたら?空山不見人。っと。ここの不と見のしたにレ点を書いたらどの順で読みます?」
「空山人を見ず。」
「あっていますよ。ではこの問1の問題を解いて、次の一、ニ点の所を読んでいてください。
「かえでさん、信くんできましたか?」
私はみんなの勉強を見ながら合間に自分の試験勉強をしました。人に勉強を教えることは自分の理解を見直すことができますし、学んだことがより記憶に残ります。私たちが勉強を続けていると、
「6時になりました。校内に残っている生徒は速やかに下校しましょう。」
「ふー。とりあえずこの範囲は理解できたー!!ありがとー。ナヲーー。」
「ほんとマジサンキューーーー。」
「このくらいで大袈裟ですよー。かえでさんと信くんが頑張っただけですよ。」
「私も英語の分詞構文が苦手だから助かりました。」
富さんがそういうと、
「小南さんは、勉強もスポーツも万能で。文化祭では悪者を投げ飛ばしたって。すごいですね。素朴な疑問なんですができないことってあるんですか?」
と一ノ瀬さんが言うと、かえでさんが、
「ナヲの苦手聞きたいですか~。」
と言うと
「はいはい。下校の時間になったんだから帰りますよ。」
私たちはお茶室を後にした。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。




