146.訓練(あきちゃん視点⑯)
「あいやん。あいやおう。そえとおはなあいやおう。」
「どういたしまして。・・お花。ああバラの花のこと?この花は三条邸のバラ園のものなんだ。昔、ナヲちゃんと正ちゃんと姉様とメイドさんと私とで一緒に庭の散歩したよね。正ちゃんが姉さんの車いすを押して、ナヲちゃんが僕の手を引いてさ。」
ナヲちゃんが頷いた。
「楽しかったね。」
するとナヲちゃんはまたにっこり微笑んだ。その表情はあの頃と変わっていない。昨日戦っていた人とは思えない。全くの別人だ。
ナヲちゃんと思い出話をしていたら、私は昨日の馬車での出来事を思い出した。私がナヲちゃんと九条さんとのことに焼きもちを焼き、一人でいじけてしまったことをまだ謝っていない。
「ナヲちゃん、昨日馬車でさ・・・。私がいじけてしまって・・・。あの。ごめん・・・。」
ナヲちゃんは、
「いにしてないよ。」
ナヲちゃんは布団からゆっくり手を出し、震える手で私の頬にに手を添えた。
「だーいようぶあから。」
そう言いながら微笑んだ。私は、ナヲちゃんの手に私の手をかぶせて、ナヲちゃんの手を私の口元にずらして、キスをした。
「ナヲちゃん許してくれてありがとう。ねえ、退院したらさ。三条のおじ様のバラ園に行こう。おじ様のバラ園の秋バラは春バラと同じくらいに美しいよ。」
と伝えると、ナヲちゃんはバラのように真っ赤な顔になり頷いた。そのタイミングでトントンとノックの音がした。返事をするとかえでさんの声で、そろそろよろしいでしょうかと尋ねられ、(本当はもっと二人きりでいたかったのだが)はいと言ってドアを開けた。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。




