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145.訓練(あきちゃん視点⑮)

 私は枕元にある体位交換の仕方が書かれた説明書を読んだ。私はもう一度布団をめくってもよいかとナヲちゃんに尋ねると彼女はこくりと頷いた。

 

 私は、ゆっくりふとんをめくると背中のクッションを外し、ナヲちゃんの上側の腕を身体の側面に置いて、両膝をゆっくり伸ばした。彼女はこんな細い手足であんなに激しい試合をしたのか・・・。上側の肩と骨盤を支えてゆっくり回転させ仰向けにすると、私が覆いかぶさるような形で彼女と目が合った。彼女が着ている寝巻の胸元がすこしはだけている。私が目のやり場に困っていると、

「お待たせしました~。」

とエツ子さんが帰って来た。すると吉田さんが、

「エツ子さん」私たち、すっごくおなかが空いたんですけど売店どこかわかります?」

と尋ね、水木さんも、

「お手数ですが案内していただけると助かるんですが。私たち方向音痴で・・・。」

と言うと、

「ああ、そうですね。そうしましょう。」

とエツ子さんは答えた。そして、年齢を感じさせない動きで、私のお茶だけを手早く入れて、

「あとのことはよろしくお願いします。」

と言い残し吉田さんと、水木さんをつれて部屋を出て行った。

 私はナヲちゃんと見つめ合ったままの体勢で彼女たちを見送ると、

「おーいたんえすあ?」

私が覆いかぶさった姿勢のままでいることに疑問を持った彼女が、どうしたのか尋ねているのだろう。私は、

「ごめん。ちょっと待って。」

私はナヲちゃんを仰向けにし、

「ごめん。寝巻を整えるね。」

なをちゃんの襟元を慌てて整えると布団をかけた。

「あいやおう。」

ナヲちゃんは麻痺をした口元を必死に動かしてにっこり微笑んだ。私は、その表情に安心したのか

「試合が終わってもナヲちゃんは立ち上がらなくて。それから身体が麻痺して動けなくなって入院したって聞いた。もしナヲちゃんに何かあったらって・・・。昨日から心配で・・・。」

と昨日からの不安を口に出していた。

「しんあいかけえ、おめんなさい。」

ナヲちゃんが謝ることは何もないのに・・・。こんな時でも相手を思いやるナヲちゃんのことがこれまで以上に愛しくてたまらなくなった。


登場人物

小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。

角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。

小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。

小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。

小南カヨ子→ナヲの母。

花ちゃん→角光明の姉。

坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。

水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部

長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。

吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。

野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。

野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。

三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。

市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。

相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族

九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。

春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。

春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父

中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。

木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。

佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。

瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。

一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。

大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。

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