136.訓練(あきちゃん視点⑥)
はじめという合図で試合が始まった。ナヲちゃんと正ちゃんの試合は私の想像をはるかに超えていた。先程の試合で、神力を使い、休憩時間はあったものの続けて試合をするナヲちゃんが、神力を温存してきた正ちゃんに敵うはずがない。ナヲちゃんが圧倒的に不利であるとこの会場の誰もが思っていた。もちろん私もそう思っていた。しかし正ちゃんと互角に戦い、さらには大川との試合の時より剣筋が良くなっているように感じる。一進一退の攻防の末に気合いを込めたナヲちゃんの胴が決まり正ちゃんを吹っ飛ばすも、そのままナヲちゃんは力尽き、倒されたはずの正ちゃんが立ち上がりこの試合は終わった。
試合に勝った正ちゃんは勝ちを確認すると、貴賓席にいる姉の方を見ながらそのまま倒れた。
2人ともそのまま起き上がる事なく、救護班が担架で2人を救護室に運ぶ。私達はその様子を見届けた後、貴賓席から試合会場に降り、代表して私が出場者に向けて試合の総評と労いの言葉をかけた。私は2人のことが心配で、何を話したか全く覚えていない。本来であればこのまま表彰式を行う予定だったが、優勝者と準優勝者が不在であるためこのまま閉会となった。
私は今すぐ2人の様子を確認しに行きたかったが、このまま兵部省の大臣剛田様と、三条のおじさんと姉と兵部省の重役との意見交換会が予定されている。私は今すぐにでも2人の様子を見に行きたい。私だけではない。きっと姉も三条のおじ様も私と同じ思いだろう。しかし、これも公務であるためにすぐに向かわねばならない。私は後ろ髪を引かれる思いで馬車に向かった。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。




