130.訓練
「大川武器防具 住所、帝都西ーーー。電話番号、03ーーー。
定休日毎週水曜日。(大川大地の紹介と言ってください。)これは訓練で使う武器と防具のお店の情報ですか?騎士団の方から訓練の道具の紹介をしていただいたんですね。」
私は頷いて答えました。
「じゃあ無くさないように、バックの外ポケット、ここに入れておきますよ。」
エツ子さんはバッグを持ってメモを仕舞う様子を私に見せながら、
「ちゃんと覚えておいてくださいね。最近物忘れが多いものですからナヲさんにも覚えておいて貰わないと不安だわ。あ、そろそろ、時間だわ身体の向きを変えますね。」
そう言うと私の身体を横に向けて、横向きを保てるようにクッションで固定しました。
「忘れないようにちゃんとこうやってナヲさんの頭のところに置いていたんですよ。」
と言いながらノートくらいの大きさの紙を見せてくれました。
「ナヲさん動けなくって退屈でしょ?」
うんと頷くと、
「私、今、膝掛けを作ったいるんです。」
と言いながら、エツ子さんは私にグレーの編みはじめたばかりの膝掛けを見せてくれました。
「ナヲさんも編み物お好きでしょ。この膝掛けは編み目を
花の形にしようと思うんです。それを繋いで膝掛けにしたらかわいいんじゃないかって。ナヲさんは毛糸、あきちゃんとの買い物の時に色々買ってこられてたでしょ。私もナヲさんと一緒に又編んでみようと思って。」
私はうんうんと頷きながらエツ子さんの優しさに感動していました。実はエツ子さん、4、5年前に白内障になって手術をされたんですが、あまり改善はしなかったようで、以来編み物や裁縫などされなくなったんです。だから手芸好きな私が退屈しない様に編み物セットを持ってきてくれたのだと思います。
私は、
「えうおさんさんあいやとおごあいまう。」
と感謝を伝えるとら
「ナヲさん、いつも忙しいでしょ。ナヲさんと久しぶりにこうやってゆっくり編み物ができてうれしいんですよ。」
と笑顔で答えてくれました。
エツ子さんと夕方まで優しい時間を過ごしました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。




