128.訓練
気がつくと見覚えがない天井がぼんやり見えます。明るい室内・・・。ここは・・・?
「あぁ、ナヲ、気が付いたのね?」
「あ。ああさん?」
うまく口が動きません。そして身体も動かせません。
「まだうまく喋れないんでしょ。口や体が動かないのは神力切れによる全身麻痺で、神力の回復に合わせて麻痺も治っていくから心配しなくてもいいそうよ。回復には2、3日かかるそうだからその間は入院だって。はぁ〜。とにかく2、3日の入院程度でよかったわ。心配したんだから。正次朗も、カウント9で何とか立ち上がって優勝したけど、その後又倒れてね。ナヲは残念だったけれどよくやったわ。」
母の説明で、私は兄さんに負けたことを知りました。・・・まだまだ修行が足りませんね。
私はもう一度起き上がろうとしましたが、体は全く動きません。
「無理に動こうとしないでいいから、感覚がないと思うけど、点滴してるから。」
「・・あんじ?・・じあん。」
私はどのくらい寝込んでいるのか知りたくて母に時間を尋ねますがうまく口が動きません。
「今は朝の9時半よ。学校には2、3日休むって連絡してるから。それと、兵部省から公欠扱いにするように学校に連絡が入っているから欠席にならないわ。」
母は私が言っていることも、今気になっていることもわかるんですね。私は皆勤賞を目指して日々健康作りに励んでいます。だから学校を欠席することを気にしていると察してくれたんですね。
「・・いーさんは?」
「上の階の病室で寝ているわ。大したことないわ、一応検査をしてもらったんだけど、単なる打撲と疲労。昼前には退院だって。あ。そうそう。訓練用のメガネはレンズが割れていたから、父さんが昼休みに眼鏡屋さんに持って行くって。いつもの眼鏡はサイドテーブルに置いているけど、必要ならつけてあげようか?
「い・・あな・・い。」
「わかったわ。必要な時は眼鏡はサイドテーブルにあるからね。」
母は流石です私が何を言いたいのかわかるんですから。
看護婦さんと正次朗にナヲが気がついたって伝えてくるわ。その間、何かあったらこれ。手元にボタンがあるから押して。看護婦さんを呼べるから。押せそう?」
「あい。」
「よかった。あっ学校には2、3日休むって連絡入れているから。」
「あいあ・・おう。」
私はもう少し眠ることにしました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。




