122.訓練
次は私と大川さんの試合です。
試合会場から戻った兄は私の隣に座ると、
「決勝戦で待ってるよ。」
とにっこり笑って言いました。
「頑張ります。」
私は大きく深呼吸をし、
「よし。」
と気合いを入れ直して会場に向かいました。
私が会場に一礼して入ると、既に大川さんが荷物置き場で木刀を袋から出しているところでした。私に気がつくと大川さんは
「お手柔らかにお願いします。」
と頭を下げたので、私も
「こちらも、お手柔らかにお願いします。」
と答えました。私たちは試合前に変なテンションになったのか笑い出してしまいました。
「そろそろ時間だね。さっ行こうか。」
「はい。」
私たちは試合会場の中央に立ち一礼すると木刀を構えました。大川さんは上段の構え、私は正眼の構えで試合開始の合図を待ちました。
「はじめ!!」
審判の合図とともに大川さんが木刀を振り下ろしたので私は木刀で受け、大川さんの懐に飛び込むと神力を身体に通し体当たりをしました。その瞬間大川さんは体に神力を通し後ろに吹っ飛ぶも体制を崩すことなく、すぐに八相の構えを取り、私に向かって飛びこみ神力を込めて袈裟切りをしました。私は紙一重で避けましたが、木刀に道着がかすり態勢をを崩し倒れてしまいました。私は受け身を取りすぐに起き上がるも、続けざまに繰り出される大川さんの攻撃を避けるしかできず、隙の無い大川さんの攻撃をどう崩すか考えていました。大川さんは騎士団で日々修練を積んであるだけあって動きにいっさいの無駄がありません。決勝戦に向けて神力を温存したかったのですが、神力を常に宿さなければ大川さんに勝つことはほぼ不可能です。大川さんも同じように考えた様で神力を体に宿したまま攻撃を仕掛けてきます。私も体に神力を込めると思いっきりジャンプをして大川さんを飛びこえ、着地をする前にそのまま足を薙ぎ払いました。倒れこんだ大川さんにとどめを刺そうとしましたがそのまま木刀を掴まれ、今度は私の胴を目掛けて打ち込もうとするので、そのまま大川さんの胸に飛び込みました。勢いよく飛び込んだため私と大川さんはそのまま転がり私が下になった瞬間両足で大川さんを蹴り上げました。その際、私も一緒に飛び上がり大川さんを地面めがけて木刀でスイカ割りの様に叩き切りました。そのまま大川さんは地面に叩きつけられましたが直ぐに起き上がると着地しようとする私に向かって飛び上がり袈裟斬りをするところで私の足が地面についたので、そのまま胴を決めました。一発だと大川さんは起き上がってくるだろうからそのまま蹴りを入れ袈裟斬りを打ちました。私はズレたメガネを元に戻すと、大川さんの様子をじっと伺いました。
大川さんはダウンしてカウント8で起き上がるもそのまままえのめりに倒れ込みました。再びカウントが始まり大川さんになんとか勝つことが出しました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。
大川大地→騎士団の団員。自宅は武器や防具の工房で以前は職人として働いていた。平民。




