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113.訓練(馬車の中で、あきちゃん視点)

「いつまでいじけてるの?起きてるんでしょ。」

正ちゃんに言われて顔を上げた。

「いじけてるよ。自分が情けなくてね。」

あぁ、今度は、正ちゃんに八つ当たりしている。でも、何故かその八つ当たりが止まらなくなって、

「いいよね、正ちゃんは姉様とうまくいってて。正ちゃんに私の気持ちはわからないよ。」

「そりゃそうだよ。わかるわけないじゃ無い。当たり前のことを言わないでよ。」

いつものように飄々と答える正ちゃんにイラついてしまい、姉さんに注意されるのも気にせずに、

「わからないならほっといてよ。」

「そうしたいんだけどさ。あきちゃんを大切に思う花ちゃんが、君を心配そうに見てるからさ。そういうわけにはいかないよね〜。」

「正ちゃんはさ、花ちゃん花ちゃん花ちゃんって、姉様のことばっかり、姉様が死ねって言ったら死ぬの?」

「あぁ、死ぬよ。それが花ちゃんの為になることだって思ったらね。平民の俺が、皇族の花ちゃんを手に入れる為にもがいてるんだよ。命、かけてるんだよ。半端な気持ちでやってないから。」

と静かに答えた。なんだよ。ますます私が惨めになるじゃないか。私のような半端な人間がナヲちゃんを幸せにできるはずがない。ますます暗い気持ちになる。

「もういいよ。」

すると正ちゃんが

「俺もさ。あきちゃんみたいに誰かに嫉妬して、自分が嫌になって自信を無くして、いらついたりした事が何度もあったんだ。特にナヲみたいになんでもできる化け物のような人間が近くにいるとさ、すごく落ち込むわけ。自分に才能がないとか、ダメな人間だからとか思い知らされちゃって。でもさ、ナヲはナヲで勉強にしても訓練にしても俺より努力して、もがいているんだよね。朝は1番に学校に行って勉強したり、身体鍛える為に走っていたり、ダンスが苦手だからって遅くまで先生捕まえて練習したり。ナヲが持っているのは努力を続ける才能なんだなって思ったの。それだったら俺にもできそうだって、それで必死努力を続けてきたらなんとか最近それがかたちになってきたんだ。だから少しだけ前に進めて、それが自信に繋がった。それにこんな俺でもナヲに圧倒的に勝っている事が一つあるんだ。それは花ちゃんを幸せにしたいっていう気持ち。それだけは誰にも負けないからね。だから何がいいたいかっていうとね。腐るな、前を見ろ、とにかく足掻いて先に進め。そうしないと、ナヲはどんどん前に進んでいくからね。足掻いても足掻いてもそれでも前に進めなくて、どうしようもない時には、頼れるお兄様とお姉様がここにいるだろ。俺、ドレスを仕立てる時はナヲの服あきちゃんに貸したよね。それに、ナヲをここに連れてきて、やる気を出させてあげたよね。言っとくけど、あいつを今日やる気にさせたら怪我をするのは俺だよ。なのにあきちゃんに協力してるよね。だからさ。辛い時は俺たちに遠慮なく頼ってよ。そしてあきちゃんの立場上ナヲに色々言えないのはわかるけどさ、辛い時はなんか辛いって言えばナヲは隣にいてくれるからさ不安な気持ちだけでも伝えてみなよ。そしたらさ少し楽になるからさ。長々とご清聴ありがとうございました。それではそろそろ時間なので、行ってまいります。」

そう言って正ちゃんは姉様の頬にキスをすると、いきなり私の方を見て、

「さっきから気になっていたんだけど、ズボンのポケットに手を入れてモゾモゾしていたでしょ?あきちゃ〜ん。何してたのや〜だ〜。」

「ナヲちゃんが作ってくれ、たたぬきのマスコット。もふもふしてたら気持ちいいから。」

「あきちゃん、兄さんからのアドバイス。ズボンのポケットにマスコットを入れてもふもふすると色々と誤解されてしまうからやめましょう。じゃぁ。」

と言って馬車を出て行った。

登場人物

小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。

角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。

小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。

小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。

小南カヨ子→ナヲの母。

花ちゃん→角光明の姉。

坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。

水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部

長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。

吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。

野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。

野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。

三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。

市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。

相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族

九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。

春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。

春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父

中村邦子さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。

木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。

佐藤美香さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。

瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。

一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。

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