103.デート
私とあきちゃんとゆずちゃん以外はすっかり酔っ払ってご機嫌です。9時になるとゆずちゃんが、明日の仕込みがあるからとおじさんとおばさんと涼くんを連れて帰りました。酔っていない私とあきちゃんはそれを見送ると、あきちゃんの馬車が来る9時半までお茶をしながら待つことにしました。
ちょっと待ってて、お茶入れるね。
奥の和室では父と母と兄とエツ子さんがまだ楽しく呑んでいます。私はあきちゃんを食堂のテーブルに案内し、お茶を用意しました。
「はい。どうぞ。お菓子もよかったら。」
「ありがとう。なんかいいな。」
「え?」
「なんか食堂のテーブルで一緒にお茶を飲むなんて家族みたい。」
「あきちゃんはうちの家族みたいなものですよ。兄さんが花ちゃんと結婚出来たら、私たちは義理の兄弟になるんだし。」
「私はナヲちゃんと兄弟じゃなくて・・・。」
すると
「兄弟じゃなくて何?あきちゃん。もっと向こうで呑もうよ~。」
と兄があきちゃんに絡みだしたので、
「あきちゃんは未成年です。ごめんね。ちょっと待ってて。」
と兄を和室に連れて行こうとすると、
「私も手伝うよ。」
とあきちゃんも手を貸してくれました。
私たちは再び食堂でお茶をしながらおしゃべりをして過ごしました。
時間になりあきちゃんのお迎えが来ました。父と兄は和室で寝てしまったようで、母とエツ子さんと3人であきちゃんを見送りました。
「お母さん、片づけ手伝います。」
「ごめんね。ありがとう。」
「ごめんなさいね。私も調子に乗ってつい飲みすぎてしまいました。お手伝いのために来ているのに。」
「いいのよ。エツ子さん。3人でやった方が早く片付くでしょ。」
こうして私たちは片づけを済ませました。
私はお風呂に入る前に、指輪を外してケースに入れ机の引き出しにしまいました。あきちゃんがこの指輪にキスをしたことを思い出し、なんだか恥ずかしくなりました。
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。




