102.デート
「今日は、角様とご飯を食べられるって言うからさ。早く店じまいしたよ。これは角様へのお土産。これはナヲちゃん家の分ね。」
「みなさん中はどうぞ。」
父がみんなを和室に案内しました。私はいただいたお菓子を台所の母に持って行きました。
「まぁ、こんなにいっぱい。食後にお出ししましょうね。ナヲ、ビールとサイダー持っていって。」
「はい。」
「みんな、飲み物は行き渡ってるかい?じゃあ、今日も一日お疲れ様、たくさん食べて、たくさん飲みましょう。乾杯!!」
「乾杯!!!」
「あきちゃん、お口に合うかしら?」
と母が尋ねると、
「とっても美味しいです。特にこのポテトサラダは絶品です。」
と嬉しそうにあきちゃんは答えました。
「このポテトサラダは私が作ったものじゃないのよ。」
と母が答えると、
「えっ、あ、ごめんなさい。」
と気まずそうにするあきちゃんに母は笑って
「これはナヲが作ったの。」
と言うと、
「え?ナヲちゃんが?」
びっくりした表情で私を見ました。
「えぇ。私のポテトサラダは結構評判がいいんです。」
「そうだと思う。このポテトサラダは毎日食べても飽きないよ。」
「いやー、流石に飽きると思いますよ。」
「ナヲちゃん、あきちゃん、・・・じゃなくて角様と相変わらず仲良しなんだね。」
と慌ててゆずちゃんが呼び方を訂正すると、
「ゆずちゃんも、涼くんもみなさんも私のことは昔のようにあきちゃんって呼んでください。その方が私もうれしいです。」
とあきちゃんがお願いすると、
「そういうことなら、俺は昔みたいにあきちゃんって呼ぶよ。その方が話しやすいしな。」
「そうね、私もその方がいい。」
と涼くんとゆずちゃんは答えました。
「この人ったら丁寧な言葉使いができないからそう言ってもらうと嬉しいわ。」
「お前だって丁寧に喋ると舌を噛みそうになるじゃねぇか。」
そう言って周南堂のみんなは昔のように「あきちゃん」と呼ぶことにしました。
それから私達は、思い出話に花が咲き、私とあきちゃんとゆずちゃん以外、みんなお酒を飲んでご機嫌になりました。
「昔よぅ、みんなで俺の歌に合わせて踊らなかったか?」
「踊った、踊った。懐かしいわね。あなたちょっと歌ってよ。」
するとおじさんが歌いながらおばさんとチークダンスを踊り出し、父と母もそれに合わせて踊り出しました。
「ナヲちゃん踊ろう。」
とあきちゃんに誘われて私達は一緒に踊り、
「エツ子さん僕と踊ろう。」
「喜んで!あー嬉し過ぎて私は寿命が10年伸びました。」
と言いながらエツ子さんは兄と踊りだしました。
「仕方ないな、ゆず、一緒に踊ってやるよ。」
「それは私のセリフ。」
涼くんとゆずちゃんもなんだかんだ言いながら楽しそうです。
「今日もステキなダンスパーティーだね。」
「本当にそうね。」
登場人物
小南ナヲ→前世で100歳まで生き、その記憶をもったままこの世界に生まれてきた。この物語の主人公。神力を持つ。
角光明→日之本帝国第二皇子。幼い頃に遊んでいたあきちゃん(明)。
小南正次朗→ナヲの5歳歳上の兄。あだ名は正ちゃん。神力を持つ。
小南敏光→ナヲの父、工部省に勤めている。姉が経営しているセイコウ出版社副社長。神力を持つ。
小南カヨ子→ナヲの母。
花ちゃん→角光明の姉。
坂上信雪→貴族(士族)。正義感が強くて優しくて力持ち。柔道部期待の星。
水木富→貴族(華族)。気さくな性格で心優しい子。茶道部
長井隆→平民。九州の長崎出身。実家は長崎で貿易商、英語、仏蘭西語、独逸語が堪能。私が企画部部長を務めているセイコウ出版社で翻訳のアルバイトをしている。。
吉田かえで→平民。曲がったことが大嫌いな明るい活発な子。帝都の下町朝草生まれ朝草育ち。
野島柚木→あだ名はゆずちゃん。両親が営んでいる周南堂で働いている。午前中は購買で、午後は周南堂の店舗で働いている。ナヲとの幼馴染。
野島涼介→あだ名は涼くん。柚木の兄。
三条礼司→日之本帝国の上院、太政大臣。20年前は文部大臣だった。光明と花ちゃんの叔父。
市川先生→1年C組の担任。担当教科は数学。英国に留学経験があり英語が堪能。
相田さん→ナヲのクラスメイト。貴族
九条 善高→貴族。父は立法省の大臣 善成。社交ダンス部。
春日フジ→金属加工の春日工業副社長。竹男の妻。ナヲの父敏光の姉。ナヲの伯母。
春日竹男→金属加工の春日工業の社長。フジの夫。ナヲの伯父
中村さん→クラスメイト。文化祭の演劇のメイクを担当。
木田さん→クラスメイト。文化祭では衣装班。
佐藤さん→クラスメイト。文化祭では調理班。貴族。ダンス部。
瀬川くん→クラスメイト。文化祭では調理班。平民。
一ノ瀬類→あきちゃんのクラスメイト。




