3日目02-対談
「ふっ」
一番最初に口を開いたのは、あのテレパシー女だった。
「テレパシーをみせてあげる!
この暴力男!!あなたが何かとあれば暴力暴力叫ぶのは
父親から何度も理不尽な暴力を受け続けてきた心の傷が原因ね!」
それはもはやテレパシーではない、とは誰も突っ込まなかった。
「くっ…!」
「積極的ね」
由衣がつっこむ。
「だってそうでしょ!?自分が生き残るためには、ほかの人の情報をできるだけ共有する必要があるもの!」
「そうだね。このゲームの一番の肝のポイントが出たね。
せっかくだから、説明しようかな」
「理解された相手が死ぬ。つまり、情報をできる限り共有させることが必要。
だからこそ、この対談フェイズが大きな意味を持つわけさ」
「てめぇ…俺様を殺すつもりか…。くそ!なぜ暴力が使えない!
こんなゲームに、何の価値がある!!」
「でも、思うんだけど、あなた金暴力SEXって自ら自分のこと話してる時点でだいぶ不利じゃない?」
由衣が鋭く突っ込みを入れる。
「……
そうだぞ!お前ら卑怯だぞ!
なんで俺に対してこんな不利なルールなんだ!」
「そんなもの、自分で話している君が悪いに決まっているじゃないか」
宋史がさぞかしどうでもよさそうに、呟く。
「ふざけやがって…」
「まぁ、その辺の事情はそこのぐるぐる巻きのお姉さんにも当てはまるけどね」
「わたしは生半可な気持ちでぐるぐる巻かれていないと何度言ったら理解できるの」
「理解できたとき、君は死んでいるよ」
「言葉遊びは嫌いなの。ぐるぐる巻き以前の問題よ」
あんたのそれは言葉遊びじゃないのか?突っ込みたかったが、やめておいた。
「テレパシーな提案です。
皆さんも自分たちの握った情報を出していきませんか?」
ここにも言葉遊びをしているアホが一人いるが、そこは放置。
「…」
悪くない提案だ。しかし…。
{ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!}
あれは、おそらくあの馬鹿すずのものだ。
いちおう私に服従しているもとい頼ってきている、少女のものだ。
(…私は、何を情に流されようとしているの?)
だいたい、すずが本当のところ何を考えているかなんて実際のところ分からない。
どうにかして生き延びるために、わたしを利用しようとしているのが大体のところだろう。
しかし…
泣きそうな目をしているこいつのことを見ていると、なぜか不思議な気持ちになる。
「さくらちゃん?何をそんなに、すずちゃんのことばっかじっと見つめてるんだい?」
宋史にそういわれる。
「のわーっ!!」
「ねえさま!?」
「つまり、さくらちゃんはすずちゃんの記憶を見た、とそういう認識でいいのかな?」
「ヒエーーーーーー!!」
隠すつもりが、あっという間にばれてしまった。
「君のそういうところ、非常にわかりやすくて好きだよ」
「まぁ、ごちゃごちゃといいわけするのは嫌いなのよね」
「ねえさま…」
「では、その内容を公開するでテレパシー!!」
語尾になった。
「いいや、この情報は公開しないわ」
「!?」
「ね、ねえさま!
さすが、姉さまであります!すずは感動しました。
やはり、姉さまについていくという選択は正しかったのです!!」
「そのかわり、
私の言うことを聞いてもらうわよ」
「は、はい??」
「その姉さまというのを今後一切禁止!
というか主従契約?あれを破棄しなさい!
それか、自分の情報を共有されるか、どっちがいい?」
「おお、素晴らしいね。
そう、情報を共有しない代わりに、
そのことをもって交渉材料にできるのが、このゲームのもう一つの味噌だ」
「タケヤ味噌ね」
「ゆ、由衣?」
なんか妙な所で妙な人間から空気を読まないボケが入ったが、気にしないことにする。
「な、なんですって、
さくら姉さま、それは本気ですか」
「本気も本気よ。というわけで以後私の部屋から出ていきなさい。
ついでに、そこの男も出ていきなさい。一人で寝たいの」
「本当に本当の世界が一周まわって人類が滅亡してたった一人の生き残りが宇宙に逃げ出して、それから新しい世界を作ったとしても本当ですかっ!」
「本当に本当の世界が一周まわって人類が滅亡してたった一人の生き残りが宇宙に逃げ出して、それから新しい世界を作ったとしても本当よ!」
「…わかりました。すず、さくら姉さまあきらめます」
「わかればよろしい」
「ぺっ。まぁこいつは所詮その程度か」
「…………
なんかものすごい上からなセリフを感じたけど気のせい?」
「もうあなたは用済みです。
はっ、すず、由衣姉さまにぴんとオーラを感じました!
由衣姉さま、すず一生ついていきます!」
「んだとコラぁ!」
こんな奴の心配をした私がアホだった。
こうなったら仕方ない。
NGワードを言ってやる!
「しね!!」
私の声が響き渡る。
「しね!!」
「しねえええええええええええええ!!」
全力で叫んだ。